「消される記憶」心霊ドクターと消された記憶 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
消される記憶
幽霊を“診る”医者の話みたいなタイトルだが、勿論そうではない。ホラー・コメディであったら面白そうだけど。
ホラーというよりミステリー・ドラマ。
『シックス・センス』のように幽霊が見え、二段構えの“衝撃の展開”があるのだが、何かどうも生温い…。
娘イーヴィーを亡くした悲しみを引き摺る精神分析医のピーター。ちょっと目を離した隙の事だった。
恩師のフォローとカウンセリングを受けながら、少しずつ立ち直っていた時、エリザベス・ヴァレンタインという一人の少女が現れ、あるメモを残す。
彼女のイニシャルは“E・V(イー・ヴィー)”。録音に声は残っておらず、幽霊…? が、娘との何かしらの関わりを感じ、残したメモを調べる。
それはある日付で、故郷の町で起きた列車脱線事故があった日と一致する事を知る…。
ズバリ、ピーターは“見える”のだ。
謎の少女は幽霊。
実は、恩師も幽霊。
さらにさらに、ピーターの患者も幽霊。
タイトル通りの“心霊ドクター”。
患者たちは皆、列車脱線事故の犠牲者。
ピーターに何かを伝えようとしているのか…?
事故に対し表情を曇らすピーター。向き合う為に故郷の町に戻るのだが…。
実家には疎遠の元警官の父。
旧友とも再会し、何かの過去の罪を告白するよう進言するが、相手は激怒し拒む。
おそらく本作一番の衝撃。脱線事故を起こしたのは、ピーターと旧友だった…!
少年時代、車の中でいちゃつくカップルを見ようと、自転車を線路の上に置きっぱなしに。それが原因で…。コラッ!
ピーターは罪を告白。もう時効で罪には問われなかったが、幽霊たちはまだ現れる。
そもそも、謎の少女は脱線事故の犠牲者じゃない。
恩師の言葉。自転車で列車が脱線すると思うか…?
消されたピーターの事故時の記憶。
それを思い出した時、事故の本当の真相が…。
事故の直接の原因は、エリザベス。切り替えレバーに手を掛けてしまい、それで…。
彼女はレイプされ、逃げていた。
彼女を襲ったのは…、何と父。
ピーターは当時、これを見ていた。が、頭の中で“捏造”された。
事情を知る女警官がピーターの父を問い詰めるも、逆に拉致されてしまう。ピーターも。
まさかの父の原因と蘇った記憶にピーターは…。
脱線事故の本当の原因、少女の死の真相、それに父が関わり…。
遂に明らかになるも、最初の衝撃の方がインパクトあり(と言っても捏造記憶だが)、最後はちと盛り上がりに欠けた。
記憶が捏造された理由もあまり説明されず。おそらくショックだろうが、実際あるらしいが、ちとピンと来ない。
ピーターの娘の死も暗示的に関わっているような、ないような…。
エイドリアン・ブロディの悲哀顔はいつもながら、オスカーが頂点だったのかパッとしない活躍続く。
作品的にも面白さが見えなかった。
いずれ見た事すら記憶から消されるだろう。