「家族の愛」たかが世界の終わり(2016) marikoさんの映画レビュー(感想・評価)
家族の愛
マリオン・コティヤール見たさに観ました。
しかし実際にこの映画を観るとマリオン演じるカトリーヌよりも、マルティーヌとアントワーヌの高い演技力に目が引き付けられっぱなしでした。主役のルイも良かったですが、この二人の強さに少し霞んでしまった印象です。
ストーリーは、12年間帰省しなかったルイが直に死んでしまうことを家族に告げる為に帰省するというもの。
既に家の中に居場所がなくなってしまったルイの孤独さを、自分と重ね合わせて感じてしまい、ただただ観ていて辛かったです。
何も知らず、ひたすら明るく喋り立てる母マルティーヌがたまに見せる愛情深い母の部分に涙せずにはいられませんでした。「あなたのことが理解できない。でも愛してる。この愛は誰にも奪えない。」名台詞だと思います。この香りどう?と、ルイに対して明るく自然にハグを誘う姿にも母の深い愛を感じ泣けました。
そして、終始憎まれ口を叩く兄のアントワーヌ。その憎まれ口も結局は愛情の裏返しだと後々に気付かされます。彼も家族のことを心から愛しているのだと思います。それ故に、家族全員で過ごした、この日曜日を素晴らしい一日で終わらせようとする。ラストシーンで憎まれ役を買って出てまでもルイを帰そうとしたのはそういう意図があってのことでしょう。
壮絶な終盤の大喧嘩の後の、マルティーヌの「次は大丈夫だから」という台詞と優しい表情に涙が止まりませんでした。マルティーヌもシュザンヌもどこかでこれが最後だと感じ取っていたのでしょう。
全員が部屋を出て行った後、ルイはそっと一人で家を去る。非常に美しいラストでした。
大変素晴らしい映画でしたが、途中に挿入されている歌が浮いていて耳障りな印象を受けました。また、カトリーヌの役は、外側の人間という心理的にルイと近い存在としての意味があったのかなとは思いますが、あまり必要性を感じませんでした。マリオン・コティヤール見たさに観たので少し残念な気持ちはありましたが、この映画自体は家族について、愛について考えさせられる素晴らしい映画です。