「フランス社会の奥深さへの敬意」たかが世界の終わり(2016) 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
フランス社会の奥深さへの敬意
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フランス語が全く分からないので、字幕では伝わらないニュアンスがかなりあったのだろうと思います。特に会話の応酬の場面では、日本語字幕では伝えるのが難しい語感もあったはずです。漫才や落語に文法的に正しい外国語字幕を付けても伝えきれないものがあるように。
それでも凄かった。家族だろうが、学校だろうが、職場だろうが、絶望的に分かり合えない、絶対この人と二人きりになりたくない人っていますが(自分がそう思われることもあると思います)、これほど真正面から、救いようのない状況を描いた作品を初めて見ました。
過去の確執の原因や知らなかった事実が判明し、最後は理解し合えて和解に至るみたいな話はよくありますが、そもそも原因となる誤解や事件が有ろうが無かろうが、この人とは絶対ムリ、という人間関係がそのまま描かれている映画を見た記憶がありません。
シャルリー・エブド以来頻発するテロや難民問題、イギリスのEU離脱(ギリシャや南欧だってまだまだ安心できない)、極右政党の台頭等々、メチャクチャ大変な時でもなお、このような家族や人間の本質に迫る作品を、本気で作れるフランス社会の懐の深さを感じました。レア・セドゥ、カッセルの極限の苛立たしい演技だけでも見応えあります。
マリオン・コティヤール‥‥昨日マリアンヌを観たばかりですが、やはり只者ではないですね。微妙な立ち位置の義姉をほどほどの存在感に抑えながらも、鑑賞後の残像度は一番でした。
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