「NWRビジュアルに身を任せて」ネオン・デーモン Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
NWRビジュアルに身を任せて
刺激的で美しい。官能的かつ本能的。観終わってから、後味がジワジワくる映画。
ファッション業界でトップモデルを目指す少女たちの"美"と"欲望"、"嫉妬"と"狂気"を、派手な映像美とハードコアな音楽で、目と耳を強烈に刺激する。主演のエル・ファニングの若さと美しさがあってこそ成立している。刹那の輝きを競う女の子たちの虚しさが痛々しい。映像も目をそむけたくなるほど痛い。
映画をストーリーで考える人には合わないばかりか、テーマ的には沢尻エリカの「へルタースケルター」(2012)のラインなので、デリケートな真実に目をそらしたくなる。"アンチエイジング"を許容するわりには、"ヒトは中身だよね"という二枚舌を批判しているともいえる。有機的な"美"と"醜"は同時に存在している。
メンス(Menstruation)を想像させる、"女性"と"血"の組み合わせは究極の美であり、生命の源である。そして"生"は"死"と隣り合っている。そういう根幹的な要素を表現する映像、強く刻まれるビートは胎動のようにイマジネーションを高揚させてくれる映画だ。
ニコラス・ウィンディング・レフン監督は「ドライヴ」(2012)という作品でイメージが縛られてしまう。それは観客の勝手なので、"期待はずれ"という意見は付きまとうだろう。「ドライヴ」の…という宣伝コピーもミスリードだし、カンヌの権威も邪魔している。
しかし、レフン監督の評価はそっちじゃないと思う。ミュージシャンでいうなら"プリンス"さながら、自分自身を"NWR"という記号でブランディングするくらいだから、映像作家としてのスタイルでとらえるほうが適切だと思う。作品におけるシャシン(寫眞)のトーンはスジが通っている。
エンディングに"Dedicated To Liv"のテロップが出る。レフン監督の妻らしいが、結局"オトコ"は、生命の源である"オンナ"に頭が上がらないのである。そういう動機から映像は生まれる。
(2017/1/14 /TOHOシネマズ新宿/シネスコ/字幕:風間綾平)