「星の光」ある天文学者の恋文 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
星の光
初老の大学教授と教え子の悲恋だから、正直醒めた気持ちで観始めた。いきなりのいちゃつきから入るからどーっと引いてしまった。進むにつれ企画、脚本の意図が読めてきた、氷解したのは1時間45分もたって論文「客星から超新星へ:死せる星との対話」が出てきてからだった、勘のいい人はタイトルでも察したろうし、52分頃のエイミーが望遠鏡を覗いているところへ届くメールで理解したかもしれない。私たちが見ている星の光は光速分遅れて届く、目にするときにはその星は存在していないかもしれない。星の光のごとく届く恋文やら励ましのビデオは星に魅せられた老教授の自己陶酔のアイデアだったのだろう。これが理解できないと変態ストーカーのミステリーになってしまう。あえて老教授の設定は死と事故で失った父への想いが交錯したものでしょう、これも事故のトラウマが語られて分かることです。
ロマンチックなだけでは娯楽性が薄いからとのスタントシーンでしょうかサービス精神は買いますが、主人公がやたらとパソコンを叩くのは情緒を削ぎますね。設定が飛びすぎで観客に分かりずらいと横やりが入ったのだろうか、いたるところでネタばらし的な状況説明が入ります、今度は説明的との批判でしょうか悲しげな犬や、枯葉の舞やハヤブサの飛翔など教授の霊が乗り移ったかのような抒情的なシーン、必然性のないヌードシーンと思っていたら最後は芸術作品という落ちも取ってつけたような言い訳に見える。推測ですがこういう作家性の強いテーマは外野が干渉せずに思い通りに創らせてあげないといけませんね・・。意外だったのは音楽がエンニオ・モリコーネさん、マカロニ・ウェスタンの代名詞にもなった音楽家ですがジュゼッペ・トルナトーレ監督と組むとノスタルジックに豹変しますね、水音を活かし音楽が出過ぎないところも秀逸でした。着想は買いますが巨匠をもってしてもロマンの実写化は難しいということが分かりました。