「「不倫でない」としても、共感はしにくい。」ある天文学者の恋文 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
「不倫でない」としても、共感はしにくい。
ずっと気になっていたのは、教授の家族構成だ。
妻は、出てこないということは亡くなっているのか?
ジェレミーと同い年の娘がいるのに幼い息子も?、歳の差は20歳はあるんじゃないか?
ということは、娘と息子とは母親が違うんじゃないのか?
そうだとしたら、二人の妻は今どうなっている?
ずっと気になっていた。
結局、それを匂わすこともなし。
強引な個人的結論。
前妻(娘の母)を亡くし、のちに再婚(息子の母)。その後妻とは息子を産んで間もなく死別し、その心の傷が深い時に、ジェレミーと出会う。
彼女の危うげな雰囲気とそれに見合わぬ知性に惹かれる。
事故(しかも自分の過失)で父を失ったばかりのジェレミーは、教授の理性とユーモアに、父性を求め、次第に恋愛感情へと発展していった。
・・・そうだったとすれば、6年ぐらい前から付き合いだした二人の関係に納得できる。それならば、教授も独身なのだから「不倫」ではなく「恋愛」になる。ただ、教授と教え子という関係、親子ほどの歳の差、そのあたりが世間的に非難の対象となるのだろう。
だから、僕としては、二人の関係には納得している。
納得できないのは、成人しているならまだしも、まだ幼い息子を顧みないことだ。いくつかの誤送信のなかに、息子への気遣いがあったことはみられた。だけど、間もなく死を迎えるのなら、家族へのケアが優先だろう。
そこら辺のモヤモヤを全部クリアにした状態で、はじめて恋愛物語として鑑賞する気分になれる。
さて、死んでからのジェレミーへのメールや荷物をどう見るか。
正直、気持ち悪い。しつこい。
死んだ後に彼女に知らせる細工は、彼女の心の傷を深くしないようにと考えた優しさなのか?
おそらく、あと数カ月の命の時点で告白することよりも、彼女に知らせずに死んでいくことの方がダメージが少ないと思ったのだろう。立ち直りも早いと思ったのだろう。
だけど、それでも死の間際を共に苦しみ乗り越えたいと思う方が、愛する人への感情としては自然ではないか?
あれでは、まさにエゴ丸出しの「ゲーム」と非難されても仕方がない。死後のメッセージは、せいぜい2つや3つ。それ以上はまるで亡霊だよ。
星の消滅と自分の死を重ね、死後もまお輝きを届けるという主題はわかるが、その手段に共感はできなかった。
ただ、あの島は綺麗だったな。