「これは明日起こり得るかもしれない…」THE WAVE ザ・ウェイブ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
これは明日起こり得るかもしれない…
ノルウェーにあるガイランゲルフィヨルド。
“フィヨルド”とは、氷河の浸水で形成された複雑な湾や入り江。
中でもガイランゲルフィヨルドは最も有名で、豊かな自然に囲まれた景観美で世界遺産にも登録され、ノルウェー屈指の観光地。
だが、常に岩盤崩落の危険に晒されている。1905年に大規模な岩盤崩落があり、多大な犠牲が…。
全くの絵空事ディザスター・パニックではなく、現実でも起こり得る天災を想定した衝撃作である…。
パニック・シーンがメインのエンタメではなく、ある家族のドラマがベース。
母親は観光ホテルに勤務。息子と幼い娘。
父親は津波警戒センターで働く地質学者。
都市部の石油会社に引き抜かれ、引っ越し作業に追われていた。
そんな時観測データが異常な数値を示し、大規模な岩盤崩落の前兆が…。
そして、それは遂に起きる…!
岩盤崩落によって起きた巨大津波。
それは高さ80mにも及び、まるでSF級。
こんなデカイ津波、幾ら何でも…と思いきや、リアルな科学検証に基づいたもの。
人も車も何の抵抗も出来ぬまま飲み込まれ、さらにはホテルまで飲み込む。
あの大震災で巨大な津波を経験した我々日本人だが、それを遥かに上回る超巨大津波が本当に起こり得るかもしれない…。
ゾッとする。
見せ場となるようなパニック・シーンはここぐらいで、ほとんどは家族のドラマとサバイバル。
スマトラ沖地震を描いた『インポッシブル』風だが、あちらよりちとドラマは単調。
その他の登場人物は少なく、パニック映画十八番の群像劇の醍醐味は薄い。
浸水の息苦しさはあるが、終盤は暗いシーンが多く見づらい。
ツッコミ所もあり。巨大津波が迫る中、主人公は車の中に避難。案の定津波の強力な水流に巻き込まれるも、同乗者は死亡したのに主人公はほぼ無傷。不死身か!
津波がホテルに迫る。息子を探す母親。ホテルの地下でスケボーしているバカ息子。
何だかいまいち感情移入出来ないこの家族。だからサバイバル・シーンもあまりハラハラせず、再会果たしたラストもあまり感動盛り上がらない。
アカデミー賞外国語映画賞(2015年当時)のノルウェー代表作品に選ばれたらしいが、まずまずといった所。
だが、見る者に衝撃と危機感は与える。
もし、本当に起きたら…?
いや、いつ起きてもおかしくない。
それは、明日かもしれない…。