「母、妻では定義しきれない、その人。」母の残像 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
母、妻では定義しきれない、その人。
ジェシーアイゼンバーグ、イザベルユペール目当てで鑑賞。
物語の意図したところを掴みきれた感はないが、部分的に腑に落ちたという印象。
イザベルユペールは既に死んだ世界で、
夫、長男、次男が死んだ母の面影をそれぞれに追う物語。
その母の人物像は、三者三様で、そのどれもが本当なんだと思う。
でも一方でその三人の描く母よりも、更に外側に(母自身は)自分というものを定義していたのではないか。
どんなに愛しても1人の人は、他人を全て知りえない。三人揃っても、1人の人を定義しきれない。
少なくともユペール演じるこの母は。
こういう意図ですよね?たぶん。
現代の時間軸で、母亡き後の三人の迷想が別軸で描かれていた。
夫(父)は、次男のふさぎ込みようにあたふたし、同僚教員とまくら友達となり、妻の元同僚に、過去の妻との不倫を問う。
長男は、子供が産まれる。なのに、元カノとやっちゃう。母の回顧展にナーバスになり(その理由があんまりピンと来なかった)、
弟と話したりする。若干母を弱い人として考えている様子があった。
次男は、まず父がうざい様子。担任と父ができていることもいやっぽい。同級生のセクシー系女子に、痛いけど面白い、
自己紹介文を渡そうと必死。でも酔っ払ったセクシー系女子の粗相にドン引きして失恋?する。
その中に死んだ母(妻)についての回想が差し挟まれる。
夫にとっては、家庭を顧みず、危険な地域での自分の使命(仕事)に邁進し、仕事仲間と永く不倫をしていた妻。
長男にとっては、夫・息子との間に距離を感じていた様子を思い出すと悲しくなっちゃう母。
次男にとっては、多分誰よりも大好きで自分を照らす太陽的存在だった母。
3人の母評は異なるから、母の回顧展、母の死因についても捉え方が違う。
多分事実として、母は自殺っぽい。
で、母は幸せと愛を精一杯、夫と息子に表現したけれど、それでは満たされないものがあったような、
三人の誰かの回想ではない母が混じっていた。
そこが作品の厚みなんだろうと思うけど、ちょっとそのせいで読み取りにくく、難しくなったように思う。
や、難しくって当然なんだろうとも思うけど。
イザベルユペールの女神感はハンパなかった。なんて神々しいんだと最近頓に思う。