「ただただもったいない。」彼らが本気で編むときは、 mmさんの映画レビュー(感想・評価)
ただただもったいない。
まず生田斗真の女装は、どう見ても女性には見えないからこそ良かった。
すぐに男性とわかる女装はそれだけでギャグになってしまいがちなところを
リンコは天使のように美しく描かれ、身体的要素が女性らしくないからこそ「内面の美」を描いているのだとよくわかる。
これが言われなければ気付かないくらいに女性らしい姿だと、トランスジェンダーをテーマに据え置く必要すら無くなってくるので、
リンコの見た目の不自然さは映画に必要なものとして最初からすんなりと受け入れられた。
トモは現代っ子らしく、思ったより反抗することもなく、すぐにリンコに懐いてしまうが、
概ね切ない気持ちやその後の良かったという満足感も得られ、途中まではとても良い作品を観たと思っていた。
だがラスト、てめーはダメだ。
本当にそう言いたくなってしまうくらいラストが、トモが実母を選んでしまうのはいただけない。
分かる。現実はそうである。子供というのは、どれほど最低な人間だったとしても実親を捨てきれないものだ。
トモの母親は悲しいことに、現実によく存在する。リンコの母親こそ、あまりにも聖母過ぎてフィクションの存在だろう。
確かにここでトモが実母を許してしまうことで、観衆は最後までトモの母親に対して怒りが収まらないため、その対比はしやすい。
ここでトモがリンコを選んだら予定調和だろうという監督の考えも透けて見えるようだ。
だがここは、素直にハッピーエンドで良いだろう!!そう言いたくなる。
これほど重いテーマを扱い、トモの友人のゲイの少年は救われないまま終わる。
ハッピーエンドだけが正義とは言わない。だが、これまでの流れでそのラストは「違う、そうじゃない。」
という言葉ばかりが頭の中でグルグル回り、しばらく寝付けなかった。
良い映画を観た!という充足感と共に寝付くはずが、違う、そうじゃない。
ものすごくモヤモヤして印象には残るだろう。
しかし映画というのは娯楽作品であることを忘れないでほしい。
救われるシーンもあるから救われないシーンが引き立つわけで、
「こういったテーマを扱うのだから現実的に、ハッピーエンドにはしたくない」という考え方の方が、それこそ予定調和である。
リンコのプレゼントは趣向を凝らしてあって良かったと思うが、
トモの母親は絶対反省していないだろうし、またトモを捨てて出て行くだろうという後味の悪さでかき消された。
映画における「現実的」をはき違えている。