「性同一性障害は決して主たるテーマではない」彼らが本気で編むときは、 Pocarisさんの映画レビュー(感想・評価)
性同一性障害は決して主たるテーマではない
性同一性障害の主人公なので、そこに目が向きがちだが、しかし、この映画はそのように生まれついた人物が現実に抱えるはずの様々な問題については、ほとんど描くのを避けている。
あまりに幸運な境遇に生まれついた人物で、一応、世間の風としての小池栄子は登場するが、まるでマンガのようなパターンにはまった描かれ方。
恐らく、この映画はそこを本気で描こうとしたのではない。
これは様々な形の「母」を描いた作品なのだ。
田中美佐子、小池栄子、りりィ、ミムラ、みな「母」である。リンコですら「母」になろうとする。
一方、「父」は一人も出てこない。
「母」によって左右される人生の話である。
荻上直子の、これまでの「言葉も交わしてないのに何となく気持ちが通じて連帯を生じる人たち」の映画からは、だいぶ進歩した。
が、まだまだ生ぬるい。
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