「宿命と必然の巡り合わせ」追憶 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
宿命と必然の巡り合わせ
タイトルはバーブラ・ストライザンドとロバート・レッドフォード共演の名作、内容はクリント・イーストウッド監督の「ミスティック・リバー」を彷彿。
演出も演技も音楽もベタで古臭く、コテコテの昭和臭を漂わせ、この手の作品が好みか否かで分かれそうだが、邦画らしい邦画になっている。
ある殺人事件の被害者、容疑者、刑事として再会した幼馴染みの3人の男。
彼らには少年時代、ある秘密があった…。
まず、サスペンス・ミステリーを期待すると微妙だろう。
はっきり言って刑事たちは何だか間抜けで、捜査としても生温い。
予告編でも流れているダッシュ・シーン。刑事・岡田が逃げる容疑者・小栗を追うみたいに見えるけど、実は全然違う。(あれは詐偽だよ~!(>_<))
事件解決も真犯人もびっくりするくらい拍子抜け。殺された被害者・柄本にしてみれば、浮かばれなくやりきれない真相ではあるが。
彼らの少年時代の秘密。
これ、察しが付くと言うか、始まって5分ですぐ分かる。
つまり本作は昨年の「64」のように、上質なサスペンス・ミステリーというより、宿命と救済のヒューマン・ドラマとして見るのが正しい。
主人公の刑事・篤。
あの時の事は忘れた事はない。が、過去の事として、何もしてこなかった。
それと引き換えかのように、妻とはすれ違い、実の母とは険悪。
あの時の温もりに、自分の人生は報いているのだろうか。
疑われる啓太。
妻の妊娠、新居の建築、会社は順調。
殺された悟。
会社の経営にどん詰まりだが、家族や会社の為に奔走。
対称的だが、二人は二人なりに今の自分の人生を必死に生き、守らねばならぬものがある。
あの時の家族のような温もりを。
あの人への献身を。
腑に落ちない点もある。一人だけ殺された悟がどうしても不憫。
が、啓太の数奇な因果、篤のラストの“再会”。
亡き友やあの時あの人の事を決して忘れず、今の彼らの幸福と救済に胸打つものがあった。
岡田准一、小栗旬、柄本佑、長澤まさみ、木村文乃、安藤サクラ、吉岡秀隆、現在の日本映画界を代表する豪華実力派の共演と好演。
日本映画界のレジェンドである名コンビ、降旗康男の演出は手堅く、木村大作の叙情豊かな映像美。
見ていたらこの作品の中心には、ある大スターが居る気がした。
高倉健の映画を多く撮った降旗&木村コンビ。
生前高倉健が高く評価していたという岡田准一。
今回のコラボは偶然ではなく、高倉健が繋いだ必然の巡り合わせに違いない。
もう叶わぬ事だが、是非とも、監督・降旗康男×撮影・木村大作×主演・高倉健&岡田准一という映画を見たかった!
共感ありがとうございます。
仰る様に、
監督:降旗康男、撮影:木村大作、主演:高倉健&岡田准一という布陣で作った、格調高い、邦画らしい邦画を観たかったです。
残念です。
ー以上ー
近大さん、コメントありがとうございます。
それは確かに観てたかったですねぇ…。
確実に名作になっていたと思います!
降旗監督には、本作のような日本映画の“原風景”的な作品をこれからもつくって欲しかったので、非常に残念です…。