「よく練られたストーリー、人間の恐ろしさ」愚行録 くーさんの映画レビュー(感想・評価)
よく練られたストーリー、人間の恐ろしさ
色んなことを考えさせられた。
子を虐待した咎で逮捕されたミツコ。
ミツコのような人間は親になってはいけないのか?
では、ナツハラさんやタコウみたいな人間は?
タコウは底無しの思いっきりクズにしか思えなかったけど、イナムラさんのように彼の利己的な性質をポジティブに捉えて好意を持つ人がいるなんてね…
タコウのような男に惚れるイナムラを見てたら、人間は似た者に好意を持つんだなと思う一方、こんな人間が人の親?と、私などは感じてしまった。
ナツハラさんは学生時代は腹黒さは見えなかったものの、子を持ち幸せに暮らす中で、ミツコとすれ違い明らかに気付いたのに一瞥して無視するところからして、タコウの利己的な性質を上回る計算高さもあったようにも思われてしまい…
恐ろしいストーリーでした。
誰が被害者で、誰が加害者か、
誰がカワイソウで、誰が悪人なのか、
観る人によって変わるでしょう。
タコウ一家を殺した罪を医師を前に告白してるのかと思いきや、
独白で、席を外していた医師が戻った途端、被虐待児に戻ったようなミツコが恐ろしく…
かといって、
妹を侮蔑した宮村を殺した田中、
妹を孕ませた田中、
普通に働いていて街ですれ違っても罪を犯していそうな人には見えないだろう田中。
冒頭、席を譲れと言われ、立った途端足を引きずって倒れて譲れと言った男性に気まずさを持たせ、バスから降り自らが見えなくなってから普通に歩き出す田中。
歪みと底無し沼のような不気味さを持つ彼もまた、親に虐待され、見放され、散々踏みにじられて生きてきての今と思うと、言葉にならない。
親を選んでないと言う、恵まれた環境に産まれてナチュラルに差別思考を持つ人が、自己肯定感が高い故に現代社会で上手く生きられるのだろうと思うと、静かな怒りを感じる。
ランチに誘ってもらえなかった自分の環境を笑いながら悔しんでた満島ひかりが凄かった。