「日本は格差社会じゃなくて階級社会!?」愚行録 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
日本は格差社会じゃなくて階級社会!?
人間は生まれながらにして人生が決まってる・・・を否定したいけど、それがかなわぬ現実社会。ストーリー的には未解決事件のオチが読めてしまったけど、父親による性暴力にも耐えお坊ちゃん大学に何とか合格できた光子(満島ひかり)のエピソードはちょっと気分が良くなった。大学に入ってから憧れだった女性と仲良くなるものの裏切られたという悲運。
階級社会・・・カースト制度みたいなものか?大学でも付属学校からのストレート組(内部生)と大学一般入試からの外部生との差別化。同じ大学なのに階級があるんですね~しかも成績による振り分けじゃない、単に育ちの差別化。一方では、光子と兄の田中武志(妻夫木聡)の不幸な家庭環境を描き出し、順風満帆なお坊ちゃまお嬢ちゃまたちを対照的に扱っていた。
ちょっと気分が悪くなるような結末ではあったけど、結局は性に奔放な若者たちが代償を払ってないのも気になる。レイプ事件も多く報道されてますけど、それがないから個人的な恨みで犯行に走っちゃった・・・といったところか。
悪ばかりでどこにも正義はないのか?と沈んだ気持ちになるものの、冒頭と終盤におけるバスの出来事が見事にコントラストが効いていた。乗客の酒匂芳が「席を譲ってあげなさい」と注意して、妻夫木聡が脚を引きずる演技をする。そして最後のバスでは自分から妊婦に席を譲る姿。最期に善行をするということは、自分が宮村淳子(臼田あさ美)を殺害した件で自首する未来をも予感させる。それも妹光子との間に出来た子の死が影響しているのかも・・・
夏原(市川由衣)と結婚し、一家殺人事件の犠牲者となった田向(小出恵介)。彼自身もまた慶應義塾高校から慶応大学に進学した内部生だったのか。そして不祥事のため・・・と、色々あったけど最近役者として復活するみたいなので期待しよう。
冒頭と似たラスト。
作中起きた出来事は何も解決されることなく、すべてが平行線上、またはねじれた関係で終結します。
しかし、最後に主人公が行った「席を譲る」という行為は、この出来事によって主人公の中の何かが変化したのだと思います。
それが救いとして心の中に温かい一滴の雫が落ちた感じでした。