「プツンって音が聞こえた」愚行録 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
プツンって音が聞こえた
冒頭で脚が悪い振りをする妻夫木を見て最高だなーなんて思ってたら想像の何倍も重い衝撃がガツンガツンと襲ってきて参っちゃった。
これが観たかった。頭を痛めたかった。素晴らしかった
主に一対一で聴取する場面の連続なんだけど、一人一人に抱えるものや物語があって最後に全てが繋がるオムニバス形式のようでかなり観入ることができた。
基本聞く側の田中がときどき聞かれる側にまわるのが効果的で良かった。
田向の生き様にドン引き笑
その開き直り方に感心するレベル。
夏原さんもまた何考えてんのか分からなすぎて怖い。
あの笑顔と器用な人間関係の裏に何があるのか、或いは何もないのか…
最後まで二人に関しては客観的な話しかないので掴めなくて、より気持ち悪く感じる。
この映画一番の衝撃は田中が宮村を殺すシーンだった。
宮村が光子のことを話してる時点でうわぁ〜やめてくれ〜って思ってたけど、まさかあんな、流れるように静かに殴り殺しちゃうとは。
夢でも見てるのかと思った
光子が田向家殺人の犯人ってのは宮村の話で予想はつくけど、実際彼女の口から語られるとズーンときた。
それと光子が「生まれ変わってもお兄ちゃんの妹でいたい」って言った時に、もしや…と思ったけど本当に兄妹の子供だったとは…!
中盤でそれが分かってもただの衝撃で終わるけど、虐待児童だった二人で、しかも宮村殺人と田向殺人を経たあとでの判明だから余計に重くて重くて
とにかく救いのないやりきれない映画。
役者のちょっと抑えめの演技が最高だった。
夏原さんと光子の笑顔が忘れられない…
濱田マリのまっすぐな目付きと妻夫木の伏せがちの目付きが印象的だった。
短編映画の監督だそうでちょっと納得。
愚行録ってタイトルもまさに。
去年の怒り を思い出す、良い邦画でした
2017.8.16
飯田橋ギンレイホールにて再鑑賞。
当たり前だけど初めて観た時と全然観え方が違っていたので追記。
改めて細かく作り込まれた演出、構成と至る所にある伏線にたまらなくなる。
別荘パーティーで後ろに光子を見つけた時には鳥肌が止まらなかった。
メモを取っていない田中、彼の表情も印象がガラリと変わって 悲しく恐ろしかった。
田中兄妹の、歪にゆがんで沈むしかないような愛もどこか虚しく空回るように感じる。
恵美の指している「犯人」と彼女の赤ちゃんの父親について考えに考えていると、もしかして田向が父親なのかも そんで夏原を犯人だと思っているのかも って行き着いてしまった。
一番納得できるのがこのへんしかない…怖いよ…
何回観ても面白く重くのしかかるサスペンス。
今の所今年の邦画でダントツNo.1に好き。
ただし鑑賞後ひどく体力を削がれてしばらくまともに動けなくなる!笑