3月のライオン 後編のレビュー・感想・評価
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将棋しかない。将棋だけじゃ生きていけない
神木隆之介、男前やろ
暗いトンネルを抜けた光の先に
後編を観終えた時、この『三月のライオン』という映画が何を描いていたのかを、ずっと頭の中で考えていた。そして、自分なりの解釈ができた。
この作品は、幼き日に家族を失うという絶望的な孤独に墜ちた主人公・桐山零が、将棋の才能という一本の手綱を頼りに、人生の暗く長いトンネルを歩いていく物語であり、そしてそこから光さす出口へと辿り着く過程を描いた物語なのだ。
前編は主人公である少年棋士、桐山零(神木隆之介)の幼き日の将棋との出会いから、現在の彼の天才であるが故の深い孤独感。川本姉妹との出会いから零が救われていく過程、そして、島田(佐々木蔵之介)や後藤(伊藤英明)ら先輩棋士達の、緊迫した勝負の緊張感を丁寧に描いていた。
対してこの後編では、将棋の勝負の世界から、零と川本姉妹を中心とした人間ドラマへと、テーマの比重が移っていく。
初めての出会いから一年後、義理の両親の家を飛び出し孤独に追い込まれていた零に、暖かな家族の温もりを与えた川本姉妹は、もはや零にとっては家族同然の、かけがえのない存在になっていた。
そんな川本姉妹に、次女ひなた(清原果耶)のいじめ問題と、かつて家族を捨てたにも関わらず、突然舞い戻ってきた川本姉妹の父・甘麻井戸誠二郎(伊勢谷友介)という、二つの試練が襲う。
この二つの問題を通して、零は彼女たちを守りたいが為に、彼なりに奔走する。それは、彼がかつて失った二つの家族――死んだ実の家族と、飛び出して来た義理の家族――への後悔から、今度こそ自分の大切な存在、やっと見つけた彼の居場所を必死に失いたくないからなのだろうか……。そんな風に思え、画面を見ていて、胸が苦しくなった。
高校生でありながらも、将棋の世界でプロとして生きている零には、今度こそ川本姉妹の力になれるという自負があった。それが彼の将棋生活をも後押しし、彼は獅子王戦トーナメント準決勝まで勝ち進む。だが、映画の中盤、彼の自信は脆くも崩れることとなる。そして、自分があくまでも川本姉妹と赤の他人であること、将棋の世界ではプロであっても、所詮はまだ大人ではなく、一人の高校生の身分でしかないことを思い知ることになる。この失望が、物語のなかで零にとって大きな障壁となり、彼を苦しめることになる――……。
一方で、零の周辺の人々にも、それぞれ葛藤がある。雲の上の存在のように思えた宗谷名人(加瀬亮)は、何年もタイトル戦に出ずっぱりで、心労のために難聴に陥っている。獅子王戦トーナメント決勝で零と戦う後藤(伊藤英明)には、意識の戻らない病床の妻を抱えながら、勝負の世界に生きている。そんな後藤と不倫関係を続ける香子(有村架純)は、プロ棋士の夢を絶たれた後、自分の生き方を見つけられずに、悪意を零にぶつける。
誰もが何かを背負い、弱さを持って、もがき苦しみながら生きている……。この映画は、そんな人々の姿を真摯に映しとる。
前編では、若くして将棋しかない人生に孤独と行き詰まりを感じていた零が、川本姉妹ら他者との交流を通じて、棋士として成長していく姿を描いた。だがこの後編では、前編とは逆の構図が描かれる。
大事な存在を守ることのできない無力さに打ちひしがれた零にとって、残されたものは結局将棋しかなく。絶望を内に抱えながらも、零は獅子王戦決勝トーナメントで、持っている全ての力を盤面にぶつけ、葛藤する。ヒリヒリ灼けるような緊張の一戦のなか、正面から将棋に向き合った時、零は壁を打ち破る。そして、自分にとって最も失いたくものを、もう二度と離さないという決意を持つようになるのだ……。
暗く長いトンネルから抜け出た光の先には、更に長い道が続いている。そして、それはまだ始まったばかりだ。天才棋士・桐山零は、その道をどう進んで行くのだろうか……。映画のラストは、そんな人生の始まりを感じさせる、希望に満ちた終わり方であったように思う。
しっかりと誠実に作られたドラマ
予告を見て若干の不安を感じていたが杞憂であった。
前編に続き生真面目とも言えるしっかりした作り。各々が決意を固め前を向く姿が素晴らしい。長尺だが見応えあるドラマでした。
漫画は途中までしか読んでないので原作との比較とかはできないのだが、自分にはプラスに作用したかも。後編で失速する2部作邦画が山ほどある中で、見事な着地はほんと偉い。
役者はみな良いのだが、後編は名人役の加瀬亮の佇まいが特によかったです。
詰め込みすぎ
違うねん
フレッシユ
重い
重い。重すぎる。ドラマが多すぎて。
いじめ・出て行ったわがままな父との再会・長男のひきこもり・長女の不倫・奥さんの病気と死・・・。
あまりにてんこ盛りで、これ将棋の映画だったよなとか、このいくつもの出来事を最後にどうまとめるの、と思いながら観ていました。
でも、映画としては飽きさせることなく見てよかった映画です。
※ 上手な役者が多く、魅力的でした。なかでもトヨエツは台詞・言い回しにすごくひきつけるものがあります。
※ 最後の宗谷プロとの勝負のシーン。背景の山々がすごくきれいでした。
※ 父親(伊勢谷友介)が同居を断られたのはほっとしました。伊勢谷友介が嫌いなわけではありません。
もう役者のどアップと駒のどアップはいらないよ〜 将棋分からないから...
これはこれであり
心で感じる。
残念。。。
大友監督×神木隆之介=傑作
原作は「ほのぼの」・「シビア」・「女子味」・「漢気」というベクトルの全く違う4つの要素が入り混じっており、この難しい食材を大友監督は見事な包丁捌きで味わい深い料理に仕上げている。前後編で一つの作品として完成されているので、前編或いは後編だけ観ても中途半端でフラストレーションが溜まるだけ。2つ繋げて観ると成る程絶妙な塩梅となり、観終わった後に長く余韻が残るほどの感動が沸き起こる。味覚音痴やスナック菓子で満足するようなお子ちゃまにはまず理解できない至高の一品である。
役者も全員いい味出している。特に主演の神木隆之介は一流のプロ棋士ながらも少年らしい青臭さや、オタク特有の視野の狭い情熱を、表情筋の僅かな動きや眼つきで繊細かつ的確に表現しており、あまりに自然でただのドキュメンタリーなのではないかと思わされる程であった。
大友監督と神木隆之介という素晴らしい組み合わせで、ぜひ別の作品も観せていただきたいと切に願う。
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