「”静”的な将棋を、”動”的に表現する作り込まれたドラマ」3月のライオン 後編 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
”静”的な将棋を、”動”的に表現する作り込まれたドラマ
巷ではデビューからの連勝記録を続ける、14歳の現役中学生棋士・藤井聡太四段の話題が席巻している。
思えば、羽生善治旋風から30年。本作の主人公、高校生棋士・桐山零は、まさに"羽生世代を打ち破る"設定だ。このタイミングで公開されているのも、なんとも奇妙な偶然である。
羽海野チカの原作コミックを前後編2部作で実写化。後編は完結編というより、主人公・桐山零のエピソード2である。今回の2部作は少し詰め込み過ぎのキライがあるし、原作は連載中なので続けようと思えば、映画はまだ数本は作れる。むしろ連ドラ向きかもしれない。しかし、この映画をこのままドラマに落としこめるほどの余裕は、いまのテレビ局にはないだろう。
というのも、大友啓史監督の作り込み、堂々とした仕上がりは、まさに映画だ。加えて前作に引き続き、キャスティングは主役級がズラリ。神木隆之介、有村架純、佐々木蔵之介、加瀬亮、染谷将太、伊藤英明、豊川悦司…加えて、後編では伊勢谷友介も加わる。
ひとりひとりの登場シーンではじっくりと寄りきる。セリフが少ないので俳優は空気と表情を作り出して演技する。映像的には対局シーンが多いので、"静"であるが、生き様を投影する棋盤の"動"として、モノローグと音楽でたたみかけてくる。その力強さにぐいぐいと引き込まれていく。
棋盤の画がほとんどない。棋譜的な説明もなく、対局に関するルールの知識はいらない。しかし将棋の映画である。そこが凄い。将棋がわかる人は無限に妄想が膨らむし、わからない人は第三者として楽しめる。
最後にもうひとつの見どころ。架純ちゃんのオンナっぷり。"広瀬すず"はガキすぎるという貴方に、"童顔+セクシー"の魅力は、こちらも旬のサービスである。
(2017/4/23/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)