太陽の蓋のレビュー・感想・評価
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福島原発事故に蓋をさせてはならない
本作はノンフィクションとして、事故から5年たってわかった範囲の事実を官邸サイドとそれを取材する新聞記者の視点で描いたセミドキュメンタリーだ。政治家が実名で登場するので、その当時の日本の危機的状況がリアルに迫ってくる。もっと多くの映画館で上映され、多くの人に見てもらいたい映画だ。
以前の名作「東京原発」のようにマイナーな映画で終わらせてはならないと思う。
知る権利と、受け入れる覚悟
「聞きたいことしか、聞こうとしない」耳が痛い台詞です。それでも、情報は大切なので、知る権利なのですが、同時に受け入れる覚悟が、要求される時代のようです。
そう云えば、ゴジラって、人がコントロールできなくなったエネルギーを、象徴するものとして、描かれたそうですが、すると、ゴジラって、世界にいくつ棲息してるんですかね。ある国の軍港には、錆びた潜水艦が多数係留してあり、そこには、小さなゴジラ(ミニラ?)が、群生しているとか。スマホ片手に、ゲットにGOです。
ま、造っちゃったものは、しょうがないとして、この先、どう付き合って行くのか、ちょっと考えるきっかけには、いい作品です。ただ、聞きたい情報だけに、流されないように、ね。書きたいことしか書かない人も、いるようなので。
巨大で鈍重なるけもの
フィクションにしたからこそのドライな視点。いやがおうにもあの時間に戻され、進行にのりながらも重い反芻を繰り返す時間。それぞれ思うことはあるけれども、今観る一本だな、と感じました。
役者さんの熱量からも作った人達の滲む思いが垣間見えて良かったです。
3.11当時、自分が何を感じていたかをリアルに思い出すだろう
3.11から数日間における日本を、官邸を主な舞台として描いたドラマ。
社会派ものは一般に真面目すぎて退屈なものが多いが、本作は構成がよく練られており、話の起伏、展開が優れているため、2時間を超えるが退屈することは一切ない。アメリカ映画ではホワイトハウスを舞台にしたエンターテインメント映画が多いが、そのニュアンスに近い。ただし、それらのアメリカ映画とちがって、ヒーローは一人もいない。
時系列で話が進行することもあり、観るものの多くにとっては当時の自分がどうであったか、何を考えていたか、官邸発表をどのような気持ちを受け止めていたかを、当時の自分に戻ったかのように思い出すことになると思われる。
あの時は、東京ももう危ない、住めなくなるかもしれないという情報が飛び交い、多くの人が東京を離れ西日本に移動した。その時に抱いた、社会の前提となっている確固たるはずの足元がゆらいでいるような、今までに味わったこともないなんともいえない不安感、危機感を思い出した。
首相官邸と東電の迷走ぶりは、まるでコントのようだが、この両者のやりとりはほぼ事実に即しているとのことなので、事実は小説よりも奇なり、ということなのか。
反原発の人も、原発推進派の人も、左の人も、右の人も、真ん中の人も一度ぜひ見ていただきたいと思う映画である。
この映画の一番の価値は、当時の自分(の不安感、危機感)をリアルに思い出すことにあると思うから。
人間がコントロールできないものを
そもそもこんなエネルギーを使おうとした人間のエゴがこの作品には多数描かれている。
それをあまりセンセーショナル過ぎず、オーバーにも表現せず、比較的淡々と流れているのは多分、俳優陣の抑えた演技によるところが影響しているのだろう。そして数人の人以外は無名に近いキャスティングが起因である。袴田吉彦・三田村邦彦位がよく知る名前で、主役の北村有起哉に至っては、父親が有名な二世ということを始めて知った位だ。
この辺が悩みどころで、確かに今流行りの俳優をキャスティングすることで話題性をつかむことは、この映画の意義的には大事なことであるのは、この作品のテーマそのものが国民にとって必要なことだからであり、しかしその俳優陣を使えば、テーマそのものがぼやけてしまう危険性も孕む。本当に難しいバランスなのだろう。
でも、やはり、もう少しキャスティング、考えてもよかったのかもね。
結局、人間なんてどんな頭がよくても、どんな高学歴でも、自然の前では直ぐに馬脚を現わす。全てが滑稽な、皮肉が充分織込まれている作品だ。
そして、福島は未だに非常事態宣言が解かれていない…
あの時、全ての建屋が爆発していれば、なんていう悪い冗談が現実として起こりえる、いや今も可能性がある、そんな日本なのだ。
やられた
3.11原発震災のタブーに迫った作品。政府内部の混乱、電力会社の隠蔽体質、人々の心と実生活の変化。実際におこったことを淡々と描いているのに、迫ってくる衝動は何なのだろうか。政治家たちが実名で描かれているこうした作品は、日本では皆無だと聞いた。
この物語は5年前の現実であるとともに、これからの日本を俯瞰するのに不可欠な作品だと思う。
危機管理が恐ろしく欠けた平和国ニッポン
役者が、あの当時の実際の人物を演じていたので、『東日本大震災』における。政治とマスコミの鍔迫り合い?というか緊迫感はあった。安全神話が脆くも崩れた原発事故。
CM「ビズリーチ」の菅田さんの演技が光っていた。
しかし、NHKが同じようなドキュメンタリーを制作していれば、また違った切り口になってはいただろう。
事実の映画化
この映画は原子力エネルギーのダークサイドを視覚化している。全編を通じてフィクションのような「太陽の蓋」のシーンは「チャイナシンドローム」と双璧であり、その違いはノンフィクションとフィクションの違いだ。
これがノンフィクションの映画化作品である。
原子力村の亡者たちはフクシマ原発事故に蓋をしようとしている。しかし、事実を実名入り映画という手法で再現したセミドキュメントタッチの作品は、社会がフクシマ原発事故を葬り去ったときに蓋棺事定の故事、永遠に事実の記録として残ることになり、そこに制作者の意図が読み取れる。
重いけれど観なければならない一作。 文責:松下 哲雄
太陽の蓋
福島原発事故の際、現場では何が起こっていたのか?官邸では何が行われていたのか?事故から5年経ち、様々なことが少しずつ分かってきているのに、新聞やテレビは殆ど報道しない。事故を繰り返さないためにも、「安全宣言」して再稼働させようとしている安全無視、利益優先を辞めさせるためにもあの時、何が起こっていたのか?過酷事故が起きた時、人は英雄になれるのか?を問う。
北村有起哉が悩む姿がカッコイイ。三田村邦彦が渋いです。
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