「涙無しでは観られない、美しき夫婦愛の形。」あなた、その川を渡らないで syu-32さんの映画レビュー(感想・評価)
涙無しでは観られない、美しき夫婦愛の形。
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初めて映画館で観たドキュメンタリー作品でした。公開前から評判で、否応無しに「観に行きたい!」と心を揺さ振られました。確かに、それほどまでの力がある作品だな、と感じました。
お互いを愛し、慈しみ合う…。心の底から大切にしたいと思う…。誰もがこうありたいと願って止まない理想を具現化したような夫婦の姿が、四季折々の山の風景と共に収められていました。
とある山奥で、ふたり切りで暮らす老夫婦。集めた枯れ葉を掛けてふざけ合ったり、ふたりで手を繋いで出掛けたり、とても仲睦まじい…。まるで、若い恋人同士のようで、微笑ましくなりました。
長年に渡って連れ添う中で、降り掛かって来た様々な困難を力を合わせて一緒に乗り越えて来たことがふたりへのインタビューを通して伝わって来ました。
楽しいときも悲しいときも、お互いを支え、励まし、助け合って生きて来たふたりの愛の形に心がどうしようもなく温かくなりました。
しかし、時の流れというものは、幸せをもたらすと共に、残酷なまでに容赦無い現実を運んでくるんだな、と。
病気によって夫がだんだんと弱っていく姿が観ていて辛くなりました。苦しんでいる姿を前に、何もしてあげられない無力感…。
どんなときも共に生きて来た、かけがえの無い人を失うことの辛さが、身に染みて伝わって来ました。
夫が天国に行っても服を着られるように、夫のお気に入りの服を火にくべる妻の姿に、涙を禁じ得ませんでした。
最期の瞬間まで、愛と感謝の心を持ち続けた妻…。ラストの夫の墓の前での慟哭が、この作品の全てを物語っているように感じました。
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