劇場公開日 2016年7月30日

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「あなたと歩んだ幸せ」あなた、その川を渡らないで 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5あなたと歩んだ幸せ

2016年12月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

幸せ

韓国の小さな村で暮らす98歳の夫と89歳の妻。
結婚76年を迎えた老夫婦の純愛を描き、本国韓国で社会現象になるほどの大ヒットを記録したドキュメンタリー。
アホなシチュエーションで純愛を語る少女漫画の実写化や11月22日にテキトーに選ばれる“いい夫婦”はまずこれを見ろ。

これが、純愛だ。これが、夫婦愛だ。
とにかくこの二人の仲の良さ!
落ち葉履きをしていたら落ち葉をかけ合ったり、雪かきをしていたら雪をぶつけ合って遊んだり、近くの川で洗い物をしていたら水をかけて悪戯したり、綺麗な花を見つけたらプレゼントしたり…。
極めつけは、出掛ける時はペアルックで、手を繋いで。
これが若者だったらバ○ップルと言いたい所だが、しかしどうだ、この微笑ましさは!
長い歳月共に歩み、育み、支え合い、今も尚お互いを想い合う姿に、誰がケチをつけられようか!
二人の日常は平凡。
一緒にご飯を食べて、散歩して、飼い犬を可愛がって…。
二人にとって、平凡なそれら全てが特別なのだ。
愛し合い、子供や孫たちからも愛され、穏やかに余生を送り、本当に理想の老後。
自分はまだ結婚もしてないが、こうありたいと心底思った。

二人の人生は全て幸せに満ち溢れていたとは限らない。
子供は12人居たが、その内6人を既に亡くしている。戦争や病で。
成長した子供たちには確かに愛されているが、子供たちは二人の事で喧嘩をする。兄さんはほとんど会いに来ない、面倒は私ばかり見てる…そんなありふれたくだらない事で。
子供たちが元気で居てくれる。ただそれだけでこの上なく嬉しいのに…。
子供たちの早死と、残った子供たちの自分たちの事での醜い争い。
どちらが悲しいか。

高齢故、勿論それは忍び寄る。
体力の衰え、体の異変…。
妻は膝の痛みを訴える。
特に心配なのは夫の方。冒頭から変な咳が気になって仕方なかった。

この邦題やファーストシーンで薄々察しは付く。
だがやはり、その時が来ると胸が締め付けられる。

ファーストシーンとラストシーンは同一シーン。嗚咽が忘れられない。
二人が育んだ営みを見てラストを迎えると、悲しみだけの嗚咽ではないように思えた。
あなたへの感謝、あなたと共に歩んだ喜び、この幸せ。

近大