「平凡な男たちが登場するアルモドバル流女性映画」ジュリエッタ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
平凡な男たちが登場するアルモドバル流女性映画
スペイン・マドリードで暮らすジュリエッタ(エマ・スアレス)。
恋人ロレンソとポルトガル移住を明日に控えたある日、街角で娘の幼友だちと出逢う。
娘のアンティアは、十数年前に出奔したきり。
その幼友だちはアンティアをコモ湖畔で見かけたという・・・
というところから始まる物語は、そのジュリエッタが、かつて娘と暮らしたアパートへ引っ越し、過去を回想するという展開になる。
現在と過去、大過去と時間軸を移しながらの語り口は、アルモドバル監督だけあってさすがに上手い。
ジュリエッタの心の深奥を示す、赤を基調とした鮮烈な画面も強烈だ。
けれども、意外とつまらない。
つまらない、というと語弊があるかもしれないが、なんだか物語の表面を撫でただけの映画みたいな感じ。
たぶん、ジュリエッタにからむ男たちが平凡だからだろう。
『ボルベール <帰郷> 』あたりに登場した男どもは、男の目からみてもダメな奴って感じの、唾棄すべき男どもだったけれど、本作ではそんなことはない。
ただ、登場して突然死んでしまうということを繰り返して、ジュリエッタに暗い過去を残すだけ。
アルモドバル映画で、平凡な男を観ることになろうとは思わなかった。
そこに尽きる。
ジュリエッタと娘アンティアの確執も微妙だし、若き日をアドリアーナ・ウガルテが演じるジュリエッタの二人一役効果も微妙。
アルモドバル監督作品としては、中程度の出来かしらん。
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