「蛍は地球人、サン・ラは土星人」美しい星 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
蛍は地球人、サン・ラは土星人
あの三島由紀夫原作のSF作品ということなのだが、それよりもヒューマンドラマの、啓発要素が強いイメージを持った。
確かに主人公家族のそれぞれはまるで何かに取憑かれた様にアイデンティティに目覚め、その目的に邁進していく。その内容は傍からは迷惑かもしれないし、犯罪に加担しているかもしれない。ましてや奇行が目立てばパージされていくのが世の常。それでも強烈な超常現象(啓示と自分で信じて疑わない)に遭遇すれば、人は生きる疑問にはっきりと解答を得られ、そのカタルシスに狂酔するのかもしれない、ある意味羨ましい内容だ。観客側からの視点でも、本当はわざと演じている、又は自覚しているのかはっきり分からない中でのストーリー展開は、結局ラストシーン迄、劇中音楽のEDMの疾走感と、シンクロする細かいカット割りの中で、引っ張られ、引きずり込まれる。
今作品のクライマックスは、議員秘書の佐々木蔵之介と主人公、リリーフランキーの激論を闘わすシーンであることは間違いない。なのだが、その迫力と、お互いを論破せんが為のあらゆる言葉に、人間の哲学への飽くなき知的欲求を垣間見ることができると思うのだが、大した頭脳もない自分には、記憶するには余りにも速すぎる台詞回しで、憶えられなかった・・・どこかで聴いたような問答集なのだろうけど・・・
唯、そんな中での疑問点は、果たして今作品の配役はこれで良かったのだろうかという点である。リリーフランキーと中嶋朋子の夫婦役もしっくりいかなければ、子供も、橋本愛とジャニーズ亀梨。どうもしっくり来ないのは、やはりそれぞれが個性が強すぎてバックボーンが透けて見えてしまうせいなのか、余計な情報がチラチラしてしまうのが、“玉に傷“である。
ただ、橋本愛の不思議ちゃん演技、リリーフランキーの決めポーズは、何度観ても思わず笑ってしまうブレイクシーンである。
非常に不思議で、色々なテーマを内包した今作品、しかしラストはきっちりSFというジャンルを語ることは間違っていないのだということを思い知らされた。佐々木蔵之介のまばたき無しの演技の異様さも、付け加えておこう。