劇場公開日 2016年5月28日

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「おっさんには毒」若葉のころ songさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0おっさんには毒

2016年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

♫Who is the girl with the crying face looking at millions of signs?
             (Melody Fair by Bee Gees )
 1971年公開のイギリス映画『小さな恋のメロディ』の挿入歌『若葉のころ』をモチーフに、青春時代に置き忘れた、叶わなかった切ない初恋の残像を追いかけるノスタルジックな映画。

 ヒロインの少女は事故で意識を無くし植物状態となった母のパソコンに1通の未送信e-mailを見つける。「お元気ですか? まだ私を覚えていますか?」それは母が自分と同じ17歳の時の初恋の相手に送ろうとした(多分送るつもりはなかったのだろう)e-mailだった。自分の今の恋にだぶらせ母に代わって「会いたい」とメッセを送る。

 1982年の母の17歳の初恋と2013年の17歳のヒロイン少女の初恋が交錯し同じ道を歩んできた青春の疼きを、ビージーズの「若葉のころ」のメロディーに乗せて織り上げて行く。

 ヒロインの母親役、ワン・レイを演じるアリッサ・チアが本当にきれい。彼女は英国の男性雑誌「FHN」で「アジアで最もセクシーな女優」に選ばれてもいる。ヒロイン役のワン・バイと17歳の時のワン・レイを同時に演じるルゥルゥ・チェンが悩殺されるくらいに可愛い。すました時のちょっと不満げな口元とおかっぱ頭で下から見上げる意地悪っぽい目つきは、フランス映画『アメリ』の時のオドレ・トゥトゥを連想した。

 映像が美しい。全体にパステルかかったような柔らかい光が画面全体を覆い、特に雨の表情を巧みに取り上げられている。リッチー・レンが演じるワン・レイの初恋相手役、リン・クーミンがザーザー降り続くバスケットコートで大の字になって思いを馳せているシーン。夕立のあとの校庭の水たまり。また、レコード盤、台湾の少女らしく現代ヒロインの部屋にはドラえもんグッズ、日本のファッション雑誌nonnoのポスター、1980代のレトロな学生服・・・。小さなディーティールを気持ちよく積み重ねている。

 まぁ、どうでもええけど30年前の、きれいな思い出と共に散った初恋の相手から、突然メールが届いたらって想像するだけで・・・心が穢れたおっさんたちは出てきたお腹の贅肉と、残り少なくなった頭髪と、血糖値や中性脂肪の検査結果を「見なかった」事にして、何とも言えない郷愁と、ちょっとの期待が頭を駆け巡るのである。

song