マイケル・ムーアの世界侵略のススメのレビュー・感想・評価
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偽善に満ちた民主国家アメリカ
かつて帝国主義の下、アジア、アフリカなど世界中を植民地化して搾取してきたアメリカ。その後も近代においては新自由主義の下、韓国や日本を市場として食い物にしてきたその姿を皮肉り、今回はヨーロッパの国々を侵略して搾取しようというマイケルムーアお得意の皮肉に満ちたドキュメンタリー。
本作で紹介される様々な国での施策はすべていいとこだけが抜き出されていて、それはアメリカに起源をもつものだと紹介される。まるでアメリカをお手本にしたかのように。
確かに憲法に自由と平等を掲げて建国されたアメリカ。日本もアメリカから民主主義を学んだ。ではアメリカは本当にお手本となるような自由と平等の民主国家なんだろうか。
まずアメリカの憲法にはどこにも民主主義なんて言葉は書かれていない。また自由と平等などというがそれはあくまでもスローガン、あるいは都合のいい文言だったりする。
黒人の参政権は1868年の憲法により法的に認められたものの、実際認められたのは1965年、女性の参政権は1920年だ。実に建国から140年以上かかってる。建国時に憲法で自由と平等を掲げていたにもかかわらず。
アメリカの憲法が言う自由と平等というものがあくまでも白人男性のためのものだということがわかる。ブラックライブズマターやミートゥー運動を見ていてもいまだに黒人や女性への差別が根強い国であることがわかるし、とても北欧の成熟した民主国家がお手本にできるような国ではなくむしろ反面教師として学ぶべきところが多いと言えるだろう。
ノルウェーの刑務所が自由で再犯率を下げていると紹介される。近年先進国では応報刑ではなく社会復帰を目指した教育刑に重きが置かれるようになっている。
厳しい刑罰を科さないのはアメリカから学んだと紹介されるがこれははたして事実だろうか。そもそもアメリカの刑務所の成り立ちからして世界的に異例であることを知る必要がある。
アメリカの受刑者の数は世界全体の受刑者の数の25%にも及ぶ。なぜこんなに多いかというとアメリカの刑務所がそもそも奴隷制度の代替手段として利用されてきた歴史があるからだ。
南北戦争以降自由となった黒人たちは職や住むところを失い、また迫害された。彼らは徘徊などという微罪で次々と逮捕された。
憲法13条は奴隷労働を禁じていたが受刑者だけは例外だった。黒人を受刑者にして新たな奴隷制度を作り上げたのだ。こぞって刑務所が建設され奴隷労働を供給するシステムが完成する。なんのことはない、アメリカの奴隷制度は廃止などされていなかったのだ。
犯罪者の社会復帰に向けた矯正施設ではなく犯罪者に仕立て上げて奴隷労働を供給するためのシステムがアメリカの刑務所の実態なのである。
当然再犯率は高い。受刑者がいなくなると低賃金労働者がいなくなるからだ。また当然受刑者の割合は黒人が多い。同じ取り締まりでも黒人を優先して取り締まりを行うからだ。ニクソン政権以来の麻薬撲滅運動がクリントンの時代まで続き、その刑は厳罰化され、麻薬所持というだけで終身刑になる者までいた。当然受刑者は増え続けた。こんなアメリカに学ぶところは何もないだろう。
死刑制度を残してる先進国はアメリカと日本だけだ。アメリカはまだ公開で行われているが日本ではすべて非公開でブラックボックス化されていて国民的議論が起きないようにされている。袴田さんのような冤罪で死刑にされた人の数はわからない。死刑にした後に冤罪かどうかなんて国が調べることもないからだ。
日本では再犯率を下げる取り組みとして番号ではなく受刑者の名前をさん付けで呼ぶようにしたという。絞首刑での死刑は日本以外では途上国くらいだ。
フィンランドの教育が世界一だとして本作でも紹介されてるけど、それはPISA(国際学力調査)で一位になったせいで、日本でも一時期フィンランド教育が話題になった。でもそれ以降の成績は下降していて今では日本よりも下位に甘んじている。かつてはフィンランドも日本同様詰め込み教育だったのを子供の自主性重視ということでゆとり教育に切り替えた。その成果が世界一の学力と言われたけど、ゆとり教育を採用した後から成績が落ち始めたらしく、いまでは逆に日本から学ぶことは多いとして昨年公開された日本映画「小学校」というドキュメンタリー映画がフィンランドで大ヒットしたという。
アイスランドの女性の政治家の多さは日本も見習うところが大きい。優秀な人間に男性も女性も関係ない。特に日本の無能なおっさん政治家たちを見てると、日本の政界は無能な男たちの最後の砦と言わんばかりに女性の進出を拒んでいる。国益を思えば政治家は全部女性に変えてほしいと思うくらいだ。女性がその地位を保証されるなら差別発言を繰り返して男に媚びを売るような女性議員もいなくなるだろうし。小池は勘弁してほしいけどメルケルみたいな人なら大歓迎だ。
イタリアの会社の有給の多さや、昼休み時間の長さなどは日本も大いに見習うべき。過労死なんてイタリア人にはとても信じられないだろう。資本主義が行き過ぎたアメリカや日本は搾取により労働者が過酷な労働条件の下で働かされていてもはやそれは奴隷と変わらない。
自由と平等などという偽善に満ちたアメリカ。ノルウェーでは国を揺るがすほどの凄惨なテロ事件が起きてもけしてその国の方針を変えることはなかった。移民や難民の受け入れも減らすことなくマイノリティにも寛容であり続けた。犯人に対する国民の憎悪感情を煽り立てて国が人権侵害を許すような政策にシフトすることもなかった。
かたや、アメリカは9.11以降民主国家という仮面を投げ捨ててあらゆる人権侵害行為を正当化した。他国への侵略さえも正当化した。まるでワイマール憲法下の民主国家ドイツが一夜にしてナチスによる独裁国家に変貌したかのように。
かくいう日本もオウム事件後には厳罰化に舵をきった。この辺がノルウェーの様な成熟した民主国との根本的な違いなんだろう。
アメリカの言う民主主義はとても危うい。何かのきっかけでトランプのカードが容易く裏返るように民主主義から独裁へと様変わりする危険をはらんでいる。その国をお手本とした日本もまたしかり。
今回のトランプ2.0を機会に脱アメリカを目指すべきじゃないだろうか。かつての大東亜共栄圏ではなく本当の意味でのアジア版EUを今こそ考えるべきじゃないかな。アメリカに搾取されて同じ様に少子化で人口減少に悩まされてる韓国と併合ではなく今度こそ平等に合併するなんてのも面白いかも。二つの国が合併したら世界第三位の経済大国になれるという。両国が合併なんてあくまでもSF映画の世界の話だけどね。
アメリカの忘れもの
世界一の国、アメリカ!
…の筈が、第二次大戦以降、あらゆる“戦い”で負け続き。
どうしてアメリカは勝てない…?
アメリカ国防総省から相談を持ち掛けられ、男は提案する。
各国を侵略し、優れたアイデアを盗んでアメリカに持ち帰る。
空母ロナルド・レーガンに乗り、ヨーロッパを目指す“侵略者”は、マイケル・ムーア!
勿論ドキュメンタリー。が、そういう“触れ込み”なのがユニーク。
欧米やアジアは遅れてる…? ヨーロッパ各国の政策に驚き…!
イタリアに行ったら驚いた!
たっぷりの有給休暇、産休。家に帰ってのゆっくりの2時間ランチタイム。充実した福利厚生。
ゆとりを持ってこそ、仕事もプライベートもはかどる。
そのアイデア、頂き!
フランスに行ったら驚いた!
まるで豪華レストランのような小学校給食。
コーラもハンバーガーもナシ。何かの餌のようなアメリカの学食なんて見ただけで食欲が失せる…。
セックス教育もしっかりと。10代の妊娠率の低さ!
そのアイデア、頂き!
フィンランドに行ったら驚いた!
かつて学力はアメリカとどっこい。それが今や、世界一の学力国に!
その要因は、宿題ナシ、授業時間を減らす、全国テストの廃止。
子供たちの自主性を尊重し、自分たちで考えさせ、遊ばせ学ばせる。
そのアイデア、頂き!
スロベニアに行ったら驚いた!
珍獣発見! 借金の無い大学生。
大学費は無料。アメリカからの転入生も。勿論学力も高い。
有料化の話が出た時は、一斉デモ。
それに対しアメリカの学生は学費が値上がりしても何の行動もナシ…。
そのアイデア、頂き!
ドイツに行ったら驚いた!
この国には勝てる!…と高を括っていたら、母国の歴史の汚点をしっかり学ばせる。
無かった事にしない。風化させない。決して忘れさせない。
二度と、あんな愚かな過ちを繰り返さない為に…。
奴隷制度や人種差別…。アメリカは何を学んだのか…?
そのアイデア、頂き!
ポルトガルに行ったら驚いた!
ドラッグの逮捕者ナシ…! 何故ならドラッグを違法としていないから。
ただそれだけじゃダメ。個人の尊厳を尊重する。死刑制度もナシ。
そのアイデア、頂き!
ノルウェーに行ったら驚いた!
まるでリゾートのような刑務所。重罪犯が収監されている刑務所さえ豪華ホテルのような待遇。
例え手元に包丁やナイフがあっても受刑者たちはトラブルを起こさない。
被害者遺族も犯人を殺そうとは思わない。同じレベルに落ちたくない。
無論死刑制度はナシ。再犯率は世界一低い。
そのアイデア、頂き!
チュニジアに行ったら驚いた!
独裁政権を倒し、民主化。それを体現したのは女性たち。
続くアイスランドにも行ったら驚いた!
1980年に世界で初の女性大統領。
男女平等どころか、女性の社会進出の急先鋒。
女性が社会を動かす。
そのアイデア、頂き!
ベルリンに行ったら驚いた!
かつて東西を分断していた壁。
その壁を壊したのは、ハンマーとノミと、自由・平等・平和を求める国民たち。
そのアイデア、頂き!
ヨーロッパ各国を侵略し、得た戦利品。
気付いた事。
それらのほとんどがアメリカ発祥、かつてアメリカが行っていた事。
より良い国を目指し、歴史の中に忘れてしまった。
侵略するまでもなかった。答えは、アメリカの歴史の中にあったのだ。
それを思い出せば、アメリカが再び世界一の国になる日も近い…?
何だかまるで、落語かお笑いネタのようなオチ。
にしても、ヨーロッパ各国の驚き優れた政策の数々…!
真似してすぐ実践しよう!…なんてそんな容易い事ではない。各国それまでの努力の賜物だし、それぞれのお国柄事情だってある。
我が日本だったら…?
有給休暇や育休→取りづらいし、取ったら後ろ指指される。
学食→豪勢な小学校もあり。
学力→低下中…。
大学費→それを稼ぐ為に学生は勉強よりバイト。
母国の歴史→敗戦国の日本だが、南京大虐殺など侵略国でもあった。今の若者がその歴史を知っているのか…?
ドラッグ逮捕→特に芸能界!
リゾートのような刑務所、死刑制度廃止→考えられない!
女性の社会進出→しているように見えて、未だ男性上位。アメリカと並び女性が政治のトップに立ててない国…。
日本も負け戦続き…。
米国版出羽守(べいこくばんでわのかみ)
その昔、日本の政治、経済などの文化人に「欧州出羽守」という揶揄がありました。
「ドイツでは、教育のシステムが……」
「北欧では、福祉のレベルが……」
「スペインでは、労働の環境が……」
「オーストラリアでは、環境保護の法律が……」
などと、とにかく日本がどれだけ遅れているかを知らしめるために、よその国を持ち上げまくって、それを新聞やテレビで有難がって意見をちょうだいするという図式の論説で、例えば、「夏時間を導入すれば、これだけの経済効果がある」とか、「金融ビッグバンで、貯蓄は紙切れになるから、株式と金に三分しろ」みたいな暴論を平気でぶちあげる輩です。
それぞれ、民族性も違えば、風土、文化、特産品も、経済基盤も、当然ながら国家予算も格差があるというのに、その国の優れた一面を切り取って、それだけを真似したところで、必ずどこかにしわ寄せが来るはずなのに。
現に、民主党政権下で、高速道路の無料化なんか実現したものの、すぐに財源が不足して終わったように、ドラスティックな政策などは「無理が通れば道理が引っ込む」そのまんまの結末を迎えたりしました。
この映画は、アメリカの抱える問題を浮き彫りにするのに、「よその国はこれだけ素晴らしい事を実現していますよ」ということをムーア監督自らが体験リポートを続ける、長編ドキュメンタリーで、病める大国アメリカの社会問題を取り上げるよりも、
・イタリアでは有給休暇の消化率が高い、アメリカは?とか
・フランスでは給食がバカ美味い、アメリカは?とか、
・フィンランドでは犯罪者の再犯率が米国の20%だが、その要因は?とか、
まさに、「欧州ではの神」現象そのものでした。
何となく頭が良くなった気になるフィルムで、この映画を見た、ただそのことだけで、人と違う優越感に浸らせてくれる魔法の映画です。
それでも、黒人の社会的地位を押さえつけたい「白人至上主義者」たちの視点から、ドラッグを規制することが黒人を支配するのにどれだけ効果的かという論点は、非常にユニークで、「合法なものにしてしまえば、彼ら(黒人)だって社会不適合者の烙印から解放される。真の自由競争に近づく」と言う意見をどこかの国(ちょっと忘れました)で真顔で主張しているのには、眼からウロコの瞬間でした。
「アメリカ国内の、南部の州で、いわばアヘン戦争的な構造支配のツールとして、ドラッグが一翼を担っている」というのは、暴論のようで「さもありなん」と思えるものでした。
かつて禁酒法と言う悪法に踊らされた国が、ドラッグを取り締まることで起きる衝突よりも、合法なものにして依存症の治癒に取り組んだほうがメリットが大きいという主張です。貧しい黒人たちがドラッグの快楽から抜け出せずに、日銭を稼ぎ、命を散らしていく構図は、薬物を違法にしていることが原因だという理屈で、どこかの国(忘れました)では、ドラッグは合法で、使用者が犯罪を犯す確率はむしろ一般人よりも低い、とか。健康被害も、むしろドーナツやハンバーガーを毎日食べているよりも低い、みたいな論調でした。
日本に生きていて、マイケル・ムーアの主張を「丸のみ」にはできませんが、そんな考え方があったのね。という勉強にはなりました。
ヨーロッパは進んでる
自国のダメなところを突き詰める!!
奪え、世界の宝物!
できないと思っていたけど案外簡単にできるものだ。
『なるほど!ザ・ワールド』でした
タイトルなし(ネタバレ)
世界各国を「侵略」して素晴らしい「宝」を盗みとる。いつもアメリカがそうしてきたように。この映画の面白いのは、ここで奪い取るのは素晴らしいアイデアだということ。さらに痛快なのは、それはもともとアメリカが生み出した「落し物」だったということ。
素晴らしい給食に、無償の高等教育、医療制度、人権、女性の権利、司法制度から労働者の権利に至る各国の事例。にわかには信じられないような成功事例が、アメリカ、そして、日本ですぐに援用できるかと言えば難しいだろうけど、途方もないやり方にもかかわらず、事実として成功しているという説得力には眼を見張るものがある。
さまざまな障害を根拠にできない理由を並べて、解決すべき問題を放置してしまうということはよくあることだが、目的が達成されることが優先されるのであれば、副次的な懸念は本来、どうでもいいことなのだ。社会が本当に解決すべき問題はなんなのか。その本質にきちんと向き合う。その潔さがあれば、本当はそんなに難しい問題じゃないものもあるかもしれない。
既得権益にしがみついた有力者と、その有力者しか見えてない政治家が社会を牛耳っているのはどこの国でも同じことだけど、このぐらい思い切ったチャレンジが社会を変えるには必要なのかもしれない。ハンマーとノミで壁を壊したベルリンのように、本当はなんてことないものに縛られているだけなのだとしたら、やっぱり僕らはハンマーとノミを手にするべきなんだろう。
いつものムーア作品のように、トランプ信者が観たら激昂するだろう徹底した反アメリカ主義に貫かれている本作。その根底にあるのはこれまたいつものようにアメリカに対する深い愛なのだ。本当の意味でのアメリカン・ドリームを。ということが理解できないドナルドに言って聞かせたいものだわ。
この作りはズルいよ
WOWOWにて観賞
マイケル・ムーアが、各国の「素晴らしい」社会システムを紹介してくれるのだが、彼自身が「素晴らしい」と考えるものなので、非常に主観的。悪く言やあ独善的。
システムを説明する各国の人々はムーアの思想に合った話をする人ばかり。反論や意見の対立も無いので、退屈。
殺人犯が伸び伸びなんて良い訳ないだろ!という意見もあるのですが、彼の世界では野蛮人なんでしょうね。
演出も特に社会的運動を取り上げる後半が単調で失速している。
ムーア自身のしかめ面もわざとらしく、自意識過剰で嫌な感じ。
彼の過去の傑作も手法はどうだったんだ?と疑いが生じてしまった。
子供が将来を幸せに過ごせるように
今回は教育と女性がテーマで、日本も耳の痛いところが多々ある。
いろんな国にはいいところや悪いところがあり、できるだけいいところだけ見習っていきたいものだ。
クージャパンもいいけど、謙虚さを忘れてはいけないと思う。
今の日本の教育、目指すのは子供の幸せ、それとも?
移民の現実が描かれていないのは?
凋落
社会の授業でこの映画を観るべき
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