「いないいないバァと、あやしてる間に本当にいなくなった赤ん坊」ウィッチ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
いないいないバァと、あやしてる間に本当にいなくなった赤ん坊
裁判記録などを基にして、ニューイングランドの民話にインスパイアされて練られた脚本ということだが、どう考えても残った人間はいなさそうだし、誰の証言を参考にしたのかさっぱりわからない。
トマシン(アニヤ・テイラー=ジョイ)にはすぐ下の弟ケイレブと未就学児くらいの双子ジョナスとマーシーがいる。さらに赤ん坊のサムがいるのだが、彼が神隠しにあったように行方不明となる驚愕のエピソードが発端となる。
ある意味、狂信的なキリスト教信者であった父親のウィリアム。ピルグリムファーザーズの一員としてキリスト教布教のために渡米、入植したのだが、教会と対立したために人里離れた深い森のそばで暮らし始めたのだ。しかし、トウモロコシの栽培もうまくいかず、妻キャサリンが持ってきていた銀のコップをインディアンが使っていた狩猟用罠と交換する。その仕掛けにもなかなか獲物はかからなかった・・・という状況。
赤ん坊は諦めたが、双子たちはトマシンが悪魔に魂を売ったと詰る。やがて夫婦がトマシンを奉公に出そうと考えたので、弟ケイレブが連れていかれないようにと禁断の森へと馬を連れていき、トマシンもそれに従った。ところが今度はケイレブが魔女にさらわれて、呪われるという事態に(観客のみぞ知る)。それもトマシンのせいだと親に告げ口する双子。こいつらが子供のくせにむちゃくちゃ不気味なのだ。
悪魔に魂を売ったのはどっちだ?と、親をも疑心暗鬼にさせ、家族の絆もギスギスと混乱させる悪魔。ケイレブがせっかく帰ってきたのに祈りの言葉を忘れた双子。父親もトマシンを疑うようになってくる様子も面白い。あぁ、これじゃ一家全滅だよ・・・と思わせる終盤からはトマシンの決意が必然性を帯びて、哀しく切ない姿を描いていた。それにしても、裸になって契約のサインを済ませなきゃいけない悪魔との儀式。幼い双子に字は書けなかっただろうから、全ては黒ヤギさんの仕業だったと感じた。銀のコップが戻っている描写も一瞬あったのですが、もしかしたら父親も絡んでいたのか?などと、色んな解釈が出来そうです。ただ、空中浮遊はやりすぎな気がしたし、魔女裁判に対して否定的な要素がないところが減点対象。
少女トマシン。清純そうな魅力いっぱいの彼女だが、出演作はホラーばかりというのもいい。21世紀のホラークイーンとなるか?!