劇場公開日 2017年7月22日

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「これはすごい・・」ウィッチ moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これはすごい・・

2017年9月2日
PCから投稿

怖い

知的

見て驚いた。だってこれ、5年とかに一本レベルの傑作じゃね?少なくとも年間ベストに入っても全くおかしくない出来。これが長編デビューとは思えない監督の力量に驚く。ほとんど家と森という空間しか使っていないにもかかわらず、緊張感は全く最後まで途切れない。ろうそくの火を使った照明は絵画的でどの画面を切り取っても象徴的な美しい絵になっている。音楽にしろ、呪術的なコーラスと音響の組み合わせで非常に凝ったものだった。

編集も本当に見事。例えば、親父がインディアンと母親の大事な銀のコップを勝手に交換してしまったという話の直後、娘が鶏が産んだばかりの卵を取っているシーンが次に来ることで「盗みの罪」が強調される。。このようによく見ると様々なシーンの切り替わりで、前のシーンとの繋がりがほのめかされるような編集を意図的にしている。

そしてキャスティングも完璧。主役の女の子の存在感はもちろん、神経質で醜い母親が美貌を持つ娘に対する偏見や、双子兄弟の金切り声から感じられる何か普通じゃなさ。。父親の威厳ある風貌と声があるからこそ、彼が狼狽する時に事の異常さがより引き立つ。

キューブリックのシャイニング同様、超自然現象が起こるのはごく一部のシーンだけで、実は恐怖で心理的に病んだ人たちが生み出している幻覚という解釈で見れなくもない。つまり、自然や病気が人間の手に負えない時代だったからこそ、その恐怖に対する想像力が魔女や悪魔といった形となったとも解釈できる(途中までは・・。)そのバランスが物語が絵空事になりすぎないシリアスな空気を作り出していると思う。(ちなみにこの映画実はシャイニングとの共通点が色々あるように思う。先程述べた、双子、隔離された場所にいる家族、魔女の誘惑、インディアンの呪い等々。。)

ホラー映画というジャンルを普段頻繁に見るわけではないけど、これは明らかにレベルが違う。陳腐なシーンが全くない。エクソシストやシャイニングと比較しても勝るとも劣らない高級感。この監督が次に何を撮るのか、非常に気になる。

moviebuff