「ホンキの”魔女映画”を初めて観た!一貫して不気味で美しいホラー」ウィッチ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
ホンキの”魔女映画”を初めて観た!一貫して不気味で美しいホラー
ゾクゾクする、ホンキの"魔女映画"を初めて観た。最近のホラー映画は、怖さより、"笑ってしまう"ものが多いが、これは違う。
始まっていきなり、画角が狭いことに違和感を覚える。最近ほとんど見なくなったヨーロッパビスタなのだ(キューブリックが好きだったヤツ)。ぎゅっと視野を映像が満たしてくれる。
なにより、色気のある魔女が出てきたりもしなければ、怪物もいない(動物が不気味に存在する)。魔法や魔法道具のような飛び道具もない。過度なスプラッター要素もないし、家具やベッドが空を飛んだりもしない。映画的に派手な表現は排除して、一切、観客に媚びていないのだ。
さまざまな魔女伝説や民話など調べつくして、時代が1630年という昔話なのもいい。ニューイングランド地方という設定から、清教徒(ピューリタン)ということか。その敬虔なクリスチャン一家という設定も実にシリアスで、キリスト教でいうところの"原罪"(宗派によって解釈が異なる)をもとにしている。
キリスト教の信者ではないので、これ以上、踏み込むことはできない。ただ無神論者として感じるのは、"物欲"や"性欲"、"嘘をつくこと"、"うぬぼれ"など、人間の心の弱さを、悪魔が心に宿る様に、例えているんだと。
一貫して、"誰が魔女だ?"という不気味なままの映画だ。だからじんわり怖い。
ヒロインは、アニヤ・テイラー=ジョイ。先日ヒットした、M・ナイト・シャマランの「スプリット」(2017)で、監禁される少女役で出ていたが、同作ではジェームズ・マカボイの23人格の演技力(演技分け)のほうに圧倒されて、彼女をちゃんと見ていなかったと反省。それほど主人公トマシン役はすばらしい。
もっとアニヤ出演の他作品を観てみたい。日本では未公開の「モーガン ~プロトタイプ L-9」(2016)とか…。リドリー・スコットの息子のメガホンで近ごろ、Blu-ray発売されている。
唯一、気になったのは、荒野で自給自足の最小限生活を送る家族たちのメイク(とわかってしまうメイク)や衣装が小綺麗で現代的なこと。けれどヒロインを美しく見せるのは正しい姿勢だ。
美しく、品がよく、新鮮なスリラー。
(2017/7/26 /新宿武蔵野館/ヨーロッパビスタ/字幕:長瀬万記)