だれかの木琴のレビュー・感想・評価
全7件を表示
ワンチャン来た!!
斉藤由貴と同じく、いつまでも歳を取らない常盤貴子がストーカーだなんて、ウヒョーご褒美だぜ!!という感じで、母子調教からの親子丼だぜグフフ!!と夢が膨らむ前半ですが、直接的な描写や狙ったカットが無いのに妙にエロいという知的な映画です。台詞や構成に無駄がなく、とても観易いのは流石ベテラン監督だと思います。中盤で、女性に髪を触ってもらいたくて男性が美容院に訪れますが、男性にとっては「ああ、女性は少女の頃からこれを求めているのか」というヒントになりました。池松君お得意のベッドシーンを封印し、ファンの方は不満かも知れませんが、無しでバランスが取れています。佐津川さんは髪型が変ですが、ナイスバトルでした。旦那の浮気相手が変なおばさんなので、会社の若い女の子が良かったです。私の部屋も外からリコーダーの音が聞こえてくるので、木琴の音に「あそこにいるのは私だ」という台詞はしんみりきました。娘が真っすぐで萌えます。ただの昼ドラのようにならなかった所が美しかったです。エンディング曲はもっと余韻に浸れるものが良かったですが、まあスッキリさせて劇場を出てもらう意図があるのでしょう。
欲望の自己消費は大人のマナー。
小夜子の無自覚な執着が恐ろしかった。
海斗の自宅を探し、苺を届け、メール送り続け、インターホンも押してしまう。
思いっきり敵意を剥き出す唯(海斗の彼女)に、嫉妬し、職場へ押しかけ、着ることのない真っ白なゴスロリ系ドレスを買う。そしてそれを海斗の部屋のドアノブに…
怖い。怖すぎる。なんてこと!!!!
わかりますけどね、満たされない欲望が勝手に漏れ出したんだって。でも、もっと欲望を自覚して自己消費しなさいよと思う。それが大人のマナーでしょうよ。
海斗もはっきりキモいとか言ってよと思ったが、言わないんだな彼は。
22歳の頃はやばかったと話す海斗。サイクリングや水泳は、暴力性の発散なのかもと思った。ヤバさを自覚しているから、別のことでヤバさを消費する。真っ当な男の子だ。マザコンとの指摘もあったが、私は海斗はいいと思う。自制が効いていていいと思う。私も耳触られたいわ。
小夜子の欲求不満は、妻として、母としての物足りなさが大いに関係してそうだ。妄想に現れるのは海斗よりも夫が多い。
夫とのセックスやそれに付随するふれあいで欲望を消費できていれば、ストーカーにはならなくて済んだように思う。
小夜子の夫もだいぶ気持ち悪い。会社の女性にモーションかけてみたり(速攻牽制されてたけど)、すれ違った女(でた!河井青葉!あたし的幸薄系のミューズ!)といきなり不倫。そして妻の異常に気付いてはいるが、歯切れの悪い対応。唯にあんたの奥さんストーカーなんだよって言われて、そんな訳ないとはっきり否定(嘘)したその真意はよくわからない。でもまあ、その後の妻とのセックスが盛り上がったようで、何よりと思った。
隣に座っているのにメールで会話する夫婦の変な距離、面白かった。
木琴の音のメタファーが、腑に落ちたような、奥歯にものが挟まったままのような、どう捉えていいかわからないが、全体的には夢中になって見られたし、面白かった。
佐津川愛美がよかった。彼女のキレキャラいい。あのゴスロリ系ファッション可愛かった。もちろん、池松壮亮も。初めて聞いたかも博多弁。なんて可愛いの。大変よかった。常盤貴子の危うさもよかった。40過ぎてますます美しい。
音楽が、さりげなくてとてもよかった。
こちらの感情をガイドしようとする音楽の使い方が最近どうも鼻に付くので。聞こえすぎるカラオケのガイドボーカルみたいって思う。余計なお世話よ。どう感じるかは観客の自由でしょうが。この作品のことではないです。
夫の部下が次の小夜子のターゲットのようだった。逃げて!菊池くん(というのも、この部下役の人、ドラマ重版出来でバイヴスの菊池くん役をやってた人なんです)!!
だれかの執着。
平凡な主婦が常軌を逸したストーカーになっていく
なんて聞くとどう考えてもホラーにしか思えないが、
常盤貴子が妖艶に主婦を演じていた。その狂気とも
執着とも判別のつかない異様な行動は、暴力的では
なくむしろ表面的なものに見えるが、ヒマな主婦と
一括りにしてしまうのは危険だと思う。夫とは違う
愛情に妻が飢えているのは必至で、タイトルのだれ
かとは海斗のように自分の興味を持続させてくれる
人と勝手に思い込む小夜子がいかに寂しいか分かる。
たびたび繰り返される盲想にも強く反映されており、
だからといってこんな主婦に「趣味の一つでも持て」
なんて話は酷なのだろうか。ともあれ標的となった
海斗には怖いほど迷惑な話だが、客なので無下にも
できない。怒りのあまり激高する彼の彼女はもっと
可哀想で^^;私は彼女に同情した。知り合ったからと
いって自分の店にまで押し掛けてくる小夜子は怖い。
様々な人を巻き込んでいく小夜子に悪気は全くない
のが更に厄介で、親切あるいは挨拶のつもりなのか。
この執着を解けるのは紛れもなく夫なんだけどなぁ。
(次は部下が標的か?いやはや^^;奥さんもうやめて)
いまいち
まず、池松壮亮、常磐貴子、佐津川愛美の演技の迫力が凄かったです。特に、仕事も趣味もない主婦・小夜子の、虚ろ、にも関わらず鬼気迫る表情には深い闇を感じました。また、夫と和解したのかな?というメールのシーンの後の、小夜子と夫の部下のやりとりから感じられる夫婦間のディスコミュニケーション感...。それから封筒の中の鍵を指でなぞることで、「別れ」を示唆する演出は好きです。ちょっとお洒落過ぎる気もしますが。
それだけに、娘と夫の説明的な演出(「うちの冷蔵庫に苺ない」とか、車内での会話)にはがっかりさせられました。得体の知れない狂気が、「安全」なはずの家庭の中から、孤独を糧に成長していく、というテーマは諸々の言葉による解説がなくても伝わります。更に言うならば、本作のタイトルである「だれかの木琴」に関する説明(幼少期の孤独)さえもとって付けた感があります。わざわざ「木琴」に関する説明がなくてもテーマは伝わります。むしろこの「木琴」に関する説明からは「単に小夜子が特殊な家庭環境だっただけなのか?」という解釈も生まれ得ると思いますし、それはかえってこの作品の「誰にでも宿り得る普遍的な狂気」というテーマを見えにくくしないでしょうか?原作小説と同じタイトルにしたことがこの問題の原因のかと思います。
それからこれは個人の好みの問題かもしれませんが、放火犯の描き方があまりにも軽薄ではないでしょうか。明らかにヤバそうな「3mm」野郎が登場したかと思えば、最終的にその人が犯人。私はマスターが犯人だったら面白いのにな(そして3mm野郎が犯人だったら心底がっかりだな)と思いながら見ていたので、この予定調和にはかなりイラっとさせられました。もう一つ好みの問題ですが、一番最後の常磐貴子のショットが可愛いのですが、これに何の意図があるのかよく分からずもやっとしました。
役者の演技は(勝村政信を除き)素晴らしいのに、正直なところ演出が台無しにしているような印象を持ちました。有楽町のスバル座で鑑賞しましたが、映画の後半に差し掛かるあたりで席を立つ方がちらほら。実際そのレベルの作品だと思います。
私への愛が揺るがないとおもえばこそ。
夫とは違う若い男(とその恋人)をダシに、自らの存在価値、夫からの愛情、幸せを再確認した一人の主婦の物語。自分の望んだように生きることが、タイトルにある木琴で自分のメロディーを奏でることならば、主人公は最終的にその目的を果たしたことになる。しかし、常盤貴子ってやっぱりいい女だとつくづく思った。
わたしの、エロスに、火をつけて
小夜子(常盤貴子)は、警備会社に勤務する夫・光太郎(勝村政信)と中学生のかんな(木村美言)と三人暮らし。
最近、東京郊外の一戸建てに越してきた。
ある日、偶然訪れる美容室の若い美容師・海斗(池松壮亮)に髪を切ってもらったその日、昼間たまたま自宅に立ち寄った夫から新しいヘアスタイルとシャンプーの匂いを褒められ、欲情した夫と行為をしてしまう・・・
というところから始まるハナシで、何が夫の心に火をつけ、何が自分の心に火をつけたのかわからないまま、小夜子は心の導火線を追い求めていく。
この導火線の象徴が美容師・海斗であり、はじめは些細なメールのやり取りだったのだが、小夜子は徐々にストーカーまがいの行為に発展してしまう。
この映画の興味深いところは、小夜子が追い求めているのは夫・光太郎でありながら、海斗に執着してしまうところにある。
いわば、生まれたばかりの雛鳥が、初めて目にした動くモノを親だと認識してしまうのに似ている。
そういえば、終盤、光太郎と小夜子の無言の会話の中に「雛鳥」の語も登場するし、そもそも光太郎と小夜子の間のコミュニケーションは微妙に断絶している。
そして、もうひとつ興味深いのは、ストーキングされる海斗の心情・態度である。
現在、25歳の彼は、22歳の頃に、母親を悪し様に罵倒した相手に対してブチ切れて、重傷を負わせた経験があり、些細なことで、心に火が着いたり、心が壊れることを理解している。
なので、小夜子からのストーキングまがいの行為に対して、適度に距離を置いている。
ここが興味深い。
そして、そんな彼の薄情ともいえる行動に対して、恋人・唯(佐津川愛美)は不満を覚え、小夜子を詰(なじ)らない海斗に愛想をつかしてしまう。
彼女の行動がいちばん常識的で理解しやすいのだが。
海斗も、光太郎も(彼は彼で、行きずりの女と簡単にベッドを共にしてしまう)、すこし常識的でなく、すぐさまバランスを崩しそうだ。
小夜子も含めて、そこいらあたりは妙にリアルで、それを抑えたタッチで展開させる東監督の演出は、すこぶる映画的。
ただの「ストーカー映画」「サスペンス映画」ではないので、注意が必要。
オマケも込みで、この評価としておきます。
余計なものが多過ぎる
序盤は夫婦関係や家族の姿から特にすれ違いはみえないのに、ずれた方向に進み始める主人公。何もないところからならまだしも、その後からすれ違いをみせるので若干後出し感がある。
男ではなくカップルに張りつくという変わったストーキングが加速して行く様子は何が起きるのかというハラハラドキドキがあり、振り返ってみればただ寂しかっただけで強烈な異常さではなかったのかもとも思えるのが面白い。
話や展開は面白いけれどチョイチョイ挟まれる、位牌、カオルの設定、徳永三郎、小刀、等の特に意味がなく大袈裟に怪しさを煽る件が話をチープにしていたし、エピローグの8割ぐらいもいらない話で冗長だった。
全7件を表示