「恋をする気持ちを忘れてしまったという方、きゅんとした恋心を思い出してみませんか?」恋 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
恋をする気持ちを忘れてしまったという方、きゅんとした恋心を思い出してみませんか?
少し前、予告で見ただけで泣いた。
伊藤洋三郎の表情、岡田奈々のたたずまい、そして、ピアノの旋律がポロンと流れただけで、だ。
50代の大人の恋。もう峠を越してからの恋だからこそ、自分の気持ちよりも相手の気持ちを思いやれる優しさ。それを周りの人たちが、おせっかいの強弱を上手く使いわけいしながら、応援する。
だけどすべては順調にいかず、突然の不幸、届かぬ思い。そんな事態に、一大決心!・・とはいかず、身を引く昭男に、こちらの心も同化して苦しくなってきてしかたがなかった。
なぜ、咲子は独身を通してきたのか、その訳はなるほどと思わせる範囲。しかし、突然の咲子の行動には驚き、驚きつつもそれほどの思いだったのだと、改めて積年の咲子の悲しみがまた胸に迫ってきた。
おまけに、いつもこちらが我慢してるっていうときに、ピアノがバックに流れ、涙がぼろっとこぼれてしまうから堪らない。
そして、ラスト。
監督、これはズルいですよ。これで★ひとつ分評価をあげちゃったじゃないですか。
まあ、いろんなラストを想像しながら行く末を案じていたんですよ?
旅先帰りを匂わせる服装の咲子を、そんな風にとらえて終わりにされちゃ、涙が止まらないじゃないですか。
上映後、ご褒美のような舞台挨拶。
監督がおっしゃってたように、観光ごり押しの映画ではなく、むしろ、「狐の嫁入り」の奇祭や、新幹線製造工場が、場面場面に必然として登場してきていた。
当時の記憶があやふやになってる出演者もいるが、それももう愛嬌の範囲。咲子役の岡田奈々は、もう彼女しかいない!と思えるほどのはまり役だったが、生の彼女もその雰囲気を醸していて素敵だった。
伊藤洋三郎ももちろんのこと、役者陣がいい。客を呼ぶために名前で決めたりせずに、その役にあったキャスティングだった。
ちなみに、このあと『百円の恋』を見て気付いたが、「足立紳、伊藤洋三郎、下松」の3点出揃いの1日だった。
HPみたら、地元でDVDを販売するそうです。
下松市の皆さん、この映画大事にして下さい。誇れる映画ですよ。