「自分を出すって幸せだ」SING シング Tohnaさんの映画レビュー(感想・評価)
自分を出すって幸せだ
楽しそうな映画だなと前々から気になっていましたが、ようやく観ることが出来ました。吹き替え版のみ鑑賞。
まず、吹き替えについてですが、内村さんやスキマスイッチの大橋さん、MISIAさん等、所謂芸能人声優が数人おり不安がありました。しかし、観終わった今ではかなり合っていたのではないかと思います。確かに内村さんは下手に感じる場面もありましたが、声がキャラに合ってたので最後には気にせず見ることが出来ました。大橋さんは特に日本語で歌うこともあって、凄く自然に歌唱シーンを観ることが出来ました。
本作は歌唱シーンが多数盛り込まれており、日本語で歌うシーンも多いです。洋楽も同じくらいあり、「CallMeMaybe」といった著名曲なので十分に楽しめます。日本語の歌は知らない曲でしたが(和訳?)ストーリーと歌詞がマッチしている為、とても感動しました。演出や歌詞はそれはもう直球でベタなのですが、実際のアーティストの方を使っていることもあり心に響きました。
この作品では主人公のコアラ「バスター」が経営する劇場の再起をかけたオーディションがあり、その過程でキャラクターの歌唱シーンが挟まります。彼らの中にはただ才能を発揮することを望むだけでなく、何かしら現実の悩みを感じている者もいます。彼らそれぞれ違う悩みではありますが、共通して「本当の自分を見てほしい」という強い願望のもと歌唱シーンに臨みます。
動画によって見えるキャラの葛藤と解放、歌のメロディ、歌詞によって伝えられる思い。この複合芸術に心を打たれないわけがありません。本当に素晴らしかった。
もちろん、全てに重いドラマがあるわけではなく、只々「自分の力を認めさせたい」と意気込む凄腕ネズミもいるわけで。彼のシーンは私も只々「すごい!最高にカッコいいステージだ!」と感嘆し楽しませてもらえます。
ここまで良い点を話してまいりましたが、気になった点も多々ありました。
まず、主人公の性格が不快です。ある場面で「ショーの準備がしたいけど電気代が払えない」という状況で、彼は「隣のお店の電気を盗めばよい」と考え、実行します。明らかに犯罪であり、隣の店は一方的に被害にあっています。他にも彼は様々な人に迷惑をかけていきます。
終盤、彼はとてつもない災難に襲われますが、それはあくまで自業自得。被害者の気持ちは決して描写されず、最後まで謝る等の行為はありません。
現実にこの様な傲慢で利を取り続ける人もいますが、最後には何らかの形で罪を償和なければならない。その場合が大半であると私は考えています。ですから、私は彼が起こした行動に最後まで納得できませんでした。
とくに彼が償いなく報われる終わり方には、どうしても疑問が残ります。仮に「罪は常に追求される訳ではない」、とするお話なら囚人になるキャラがいることはテーマの理解を難しくしてしまっているでしょう。
一見すると我々人間の住む街と変わらない、非常に現実的な外見故に気になってしまう現実の思想との齟齬。この点は好みになると思いますが、私は受け入れることが出来ませんでした。
因みに、物語そのものの流れは、ご都合主義ではありますが大きな破綻は感じられませんでした。強者が輝き、くすぶる者たちにチャンスが与えられる。予想しやすい展開ではありますが、あまり考えずに楽しめる物語です。
まとめますと、主人公の行動とその扱われ方に好き嫌いが分かれることと思います。また、物語の展開は非常に予想しやすいです。
しかしながら、最後のショーで自分をさらけ出した者達の幸せそうな姿、輝く姿に夢中になる映画でした。
考えるず、楽しむこと。以上です。