「今作の見所」ジェイソン・ボーン saikimujinさんの映画レビュー(感想・評価)
今作の見所
ボーン映画は手放しで絶賛するような映画ではないが、必ず一定量楽しませてくれる映画。
今回も良い意味で期待を裏切らなかった。
ボーン映画の魅力は「観客の予想の一歩先の行動をボーンがとってくれる」所にあり、また同じスパイであり、同じイニシャルでもあるジェームズボンドと違い、無口で、知的で、冷静沈着でクール、冗談は言わないし、酒も飲まない、女好きじゃない、ってところ。
今回の見所はやはり「逃亡者」で執拗な追跡者を演じたトミーリージョーンズが遂にジェイソンボーンを追跡する、という点。
そして今まで美人ヒロインを一切出さなかったボーン映画が遂に美人ヒロインを出すという新たな挑戦。しかもそれがアリシア・ビカンダちゃんなのだから最高に決まってる。
ボーンは判断を下すまでの時間が異常なほど速くて、しかも知的。判断後の行動も速いので、例えば情報を持つ人物が殺されてもそいつの携帯やメモを回収してそこから次のリードにすぐに繋げる。
通常の映画なら残念がったり悲しんだりするものだが、ボーン映画はそこを極端に端折ってくれるので、話がどんどん進んでいって飽きない。
しかし今回のジェイソンボーンの残念な所は、観客の予想の一歩先の行動をとる、といった感じではないし、ボーンの知的な判断能力と行動力の速さを表すシーンが少なかった点だ。
そして今回もしっかりカーチェイスシーンを入れてくれて、ラスベガスでSWATのトラックが乗用車を片っ端からぶっ壊すシーンは凄い迫力ではあったのだが、ボーン映画に必ずある格闘シーンは、敵役にヴァンサンカッセルを起用しようとも、「ボーンアイデンティティ」のあの不気味な暗殺者の印象はやはり超えられなかった。
また追跡者のトミーリージョーンズもあまり活かしきれてない様に感じたので、もっとキレッキレのトミーリージョーンズが見たかったし、もっとビアンカちゃんの活躍も見たかった。少し欲張りすぎたのかもしれない。
評価する点は、時世をうまく取り入れてる点。現実ではGoogleやYahoo!、Facebookなどの巨大IT企業がどれだけCIAやNSAに情報協力しているのかが注視されていて、実際にオバマ大統領がそれらの企業のCEOを集めて会議をしたりもしているが、特にGoogleは協力を拒否する姿勢をとっているのはご存知の通り。今作に出てくるディープドリームという企業はGoogleのそんな姿勢を下敷きにしているのだろう。またディープドリームのCEOが「あんたたちスノーデンにあんだけやられたのにまだ懲りないのか?」というシーンは興味深かった。
良い所、残念な所、色々ある。
確かに今までのボーン映画同様に、相変わらず手持ちカメラで映像は揺れまくるし、カット割りは速い、地名のテロップの出し方も一緒だし、エンディングで流れる音楽も一緒だ。なので少し古臭い気がするし、新しみは無いが、従来のボーン映画のファンの期待は裏切らない。いつものボーン映画を見せてくれている。
マット・デイモンはインタビューで「まだまだボーン役を他の役者に譲る気は無いよ」と言っているので今後のボーン映画もとても楽しみである。