「ニコラス・スパークスにマンネリの美学は通用しない」きみがくれた物語 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
ニコラス・スパークスにマンネリの美学は通用しない
ニコラス・スパークスの作品が既に王道を超えてマンネリなのはもう重々承知。マンネリもここまで貫けば一種のブランドとも言えるわけで、監督が変われど出演者が違えど、ワンシーン見ただけで「これってニコラス・スパークス映画?」と思わせる世界観の構築だけは本当に称賛に価する。本当、それだけは。
「メッセージ・イン・ザ・ボトル」とか「きみに読む物語」くらいのころまでは、出演者もスターや実力派が揃っていて、ロビン・ライトやらダイアン・レインやら、若手でもライアン・ゴズリングなどが主演を張って、スターの輝きが物語の陳腐さをいくらか補える感じがあったけれど、ここ数年は無名の小物俳優ばかりになってきて、演技も稚拙だから物語の陳腐性がありのままダイレクトにスクリーンに出てしまう。映画よりディズニーチャンネルがお似合いじゃないの?って思うほど。
原作が二部構成になっているのに準じて映画も二部構成になっており、二人の出会いの「選択」を描いた前半と、出会いから11年後の命にまつわる「選択」を描いた後半という風に分かれている。前半部分は、いつものスパークスよろしく、恋することを手放しに称賛している感じがなんとも居心地が悪い。いやもちろん恋をすることは素晴らしいことなんだけれど、主人公二人にしろ、獣医の父親にしろ、まるで恋惚けすることを賛美しているようで白けてしまう。
後半に入り、物語がシリアスに傾いたことで、恋惚けに水を差して目を覚まさせるような展開が待っているかと思いきや、思わせぶりにキリスト教の考えや命の選択の価値観のようなものを描いはみても、主人公たちをひたすら甘やかすだけの結論にしか到達できない苛立ち。「命」という大きなテーマさえも、恋惚けのスパイスに使ってしまう無神経さは、毎度のことながら好きになれなかった。