「ラグナロクに立ち向かえ」マイティ・ソー バトルロイヤル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ラグナロクに立ち向かえ
アベンジャーズ・メンバーの中でもソーは最強の一人である筈なのに、作品的にはまあ無難に面白いといった感が。
アイアンマンは鉄板だとしても、キャップには『~ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー~』で大きく差を付けられ、魅力的な新ヒーローも続々登場し、来年のヒーローたち三度結集を前にちと押され気味…そこへ、この最新作。
一気にどうした!?
秘められた力が解き放たれたかのように、大ハッスル!
間違いなくエンタメ性はシリーズ1番!
シェイクスピア劇風の雰囲気や取って付けたような恋愛要素は削ぎ落とし、痛快テンポのアクション中心。
冒頭アクションから始まり、話題のソーvsハルク、クライマックス・バトル、合間合間にも見せ場を設け、飽きる事無い。
バトルシーンにかかる「移民の歌」が最高にテンションMAX!
さらに今回はすでに言われてる通り、コメディ要素がたっぷりと。
冒頭から炎の悪魔が話してるのにクルクル回るソー、ソーとロキの“「助けて!」”、ソーとハルクの掛け合い、宇宙の何処ぞの星で私服姿がシュールなバナー、着地出来なかったバナー、イカれてるグランドマスターや“俺っち”なコメディ・リリーフのキャラなどなど、ユーモア度は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『アントマン』にも匹敵。
いやはや、楽しい楽しい!
でも、そう笑ってはいられない今作。
アスガルドに終末の危機が。
遂にケイト・ブランシェットがMCU参戦。
演じるは、死の女神、ヘラ!…いや、ヘラ様!
冷酷残忍で、その力はソーを上回る。あのムジョルニアさえ…!
ソーとは意外過ぎる関係が。
ケイトがさすがの存在感、見事な女帝っぷり!
フリーザ様やハマーン様のように、“ヘラ様”と呼ぶに相応しい。アベンジャーズとも戦って欲しいくらい。
そんな強大な敵を前に、ソーは即席チームを結成。その名も、“リベンジャーズ”!
短髪のソー。(切ったのはお馴染みのアノ人!)
ロキは相変わらずいつ裏切るか。
遠い星でばったり再会のハルク。
そして、ソーを売り飛ばした女賞金稼ぎ、スクラッパー142。彼女の素性、本当の名は…。ヘラと共に、今回美味しい役所。
それにしても、MCUの監督の人選には舌を巻く。今作の監督タイカ・ワイティティも全くと言っていいくらい無名だが、その演出は快調。
ビジュアル面でも目を見張るものがあり、ある人物の悲しい過去のシーンが、まるで神話の絵画のようなセンス。
お楽しみのリンクネタも勿論織り込み、魔術師ヒーローや女スパイのワンシーン登場にニヤリ。
全編ポップだが、根底には暗い陰も潜む。
敬愛する人物を失ったソーの悲しみ。強大な敵に絶望。己の力の限界。
ある人物の悲しい過去。
ヘラの激しい憎しみ。
アスガルドのまやかしの平和。暗黒の歴史。
ラグナロク(世界の終わり)の予言。
だが、ただ黙って運命や予言に流されるだけじゃない。
己を解き放て。
終わりに立ち向かえ。
例え世界が滅びようとも、でもまだ終わりじゃない。
生きてさえいれば。民と共に。
エンディングのオマケ映像は必見(ジェフ・ゴールドブラムの方じゃないよ)。
そのまま『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』のOPになるそうで、期待が増した!
最後に、邦題問題。
原題通り“ラグナロク”の方が良かったと思う。
分かり易さを表した配給会社の苦肉の邦題である事は分かるが、やはり“ラグナロク”は劇中何度も引用されてるし、それにタイトルには必ず意味が込められ、例え最初分からなくても、意味を調べ、映画を見てその意味を知る。
それも映画を見る醍醐味の一つ。