「歌って、家族を忘れないで」リメンバー・ミー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
歌って、家族を忘れないで
馴染みの無いメキシコの“死者の日”。
でもこれって、日本のお盆と全く同じ。
年に一度だけ死者が現世に帰ってきて、家族と過ごす。
死者と生者はいつまでも繋がっている。
万国共通。こういう習わしって素敵だと思う。
それを、ファンタスティックな冒険と感動的な家族の物語に仕上げ、さすがのディズニー/ピクサー。
また一つ、名作が誕生した。
魅力的なポイントが多々。
順々に。
まずは、音楽。
劇中彩るメキシコ音楽が心地よい。
中でも、話に深く関わる主題歌の“リメンバー・ミー”。
ゴージャスなステージで歌うのもいいが、ある人物が歌う本当の“リメンバー・ミー”に瞼が熱くなった。
イメージを覆すようなカラフルな“死者の国”。
これはもう、アニメーションならではのイマジネーション!
出国/入国審査や手続きとか、現世をちょっぴり風刺。
あの世がこんなにユニークだったら、もし死んでも嫌じゃない…なんてね。
キャラ描写の上手さもいつもながら感心する。
何と言ってもやはり、主人公の少年ミゲルが死者の国で出会う陽気なガイコツのヘクター。
主人公に同行する少々問題アリのコメディリリーフかと思いきや、実は…。
意外や歌も上手く、ここら辺の伏線が終盤感動に繋がっている。
音楽が大好きな靴屋の少年、ミゲル。
憧れは、偉大なミュージシャン、デラクルス。
実はデラクルスこそ、ひいひいおじいちゃんだった。
が、そのひいひいおじいちゃんが家族を捨て音楽を選んだ為、一家では音楽が禁止に。
家族に反発までして、音楽を諦めないミゲル。
死者の日にひいひいおじいちゃんのギターを弾き、死者の国に迷い込んでしまう。
戻るには、先祖の“許し”を得る事…。
どんな家庭にだって決まり事はある。
でも、この一家の音楽禁じは厳し過ぎる。極端に言えば、音楽の“お”の字もダメ!
大好きな事が出来ないミゲル。
勿論、家族も大事。
その板挟み。ダメ!ダメ!ダメ!…と抑え付けられる子供は見ていて胸が痛くなる。
それを決めたのは、ひいひいおばあちゃんのママ・イメルダ。
なので、死者の国で、音楽に理解を示してくれない先祖より、同じ音楽を愛するひいひいおじいちゃんから“許し”を得ようと、ひいひいおじいちゃんを探す…。
てっきり、ひいひいおじいちゃんが家族を捨てた本当の理由があって、家族と和解して…という話の流れになるだろうと思っていたら!
驚きの展開に!
話の展開は面白く飽きさせず、見事、家族と家族を繋ぐ音楽の物語に着地している。
それにしても、家族の中に大悪党が居なくて良かった…。
死者も死ぬ。
それは、現世で自分を覚えている人が誰も居なくなった時。
何だかそれが日本でも問題になってる孤独死と通じるものを感じ、悲しさや寂しさをひしひしと痛感した。
せめて、家族だけでも自分を覚えていてくれたら…。
もし、家族からも忘れ去られたら…。
だからこそ、我々は先祖を忘れない。
先祖が我々に何を遺してくれたか。
だからこそ、先祖は我々を忘れない。
我々が先祖をどれほど想っているか。
困った時、悲しい時、辛い時、嬉しい時、楽しい時、幸せな時、いつだって傍に居てくれるのは…
先祖が居て、家族が居て、自分が居る。
せっかく日本には、彼岸やお盆がある。
家族と共に、先祖に会いに行こう。