「ルークとレイア、この兄妹の歩んできた人生がかくも重かったのか、をこうして観られたことに感動している。二人それぞれに良いショットがありそれだけでも複数回観る価値があると思える。」スター・ウォーズ 最後のジェダイ ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
ルークとレイア、この兄妹の歩んできた人生がかくも重かったのか、をこうして観られたことに感動している。二人それぞれに良いショットがありそれだけでも複数回観る価値があると思える。
クレイトの基地でレイアがコートの襟越しに戦場を見つめるシーンの絵は額に飾っておきたいと思える。個人的に今作のベストショットだった。
さて初見では違和感のある仕掛けが複数あったが、二回目の鑑賞後はある程度納得している。
たとえばポーになぜ作戦を伝えなかったかだが、直前に命令を無視した下士官に言う必要はないし、言ったところで結局は反感を持っただろう。メタ的には今回のポーは旧来のファンのカリカチュアで、お前らは何を言ったところで批判するんだよな、ということ。だからこの構図でオールドファンがセンシティブなのは必定。ただしポーは現場復帰したレイアによって作戦の真相を明らかにされた際には「それはうまくいく」とあっさりしたものだったが、要は誰が伝えるか、によって受け取る側の印象も変わるということだ。ポー達の無謀な作戦の流れで、情報は漏洩してしまったのだが。
またルークはなぜ思念で戦うのかというと、それは今作の特徴でもある時間的な制約もあるがやはりラストであの夕陽のシーンが必要だったから。また『ローグ・ワン』でのベイダー同様、彼の劇中における最高のパフォーマンスをこれまで誰も到達していないカタチで見せることができた。壮大な舞台、美しい映像に支えられての一騎打ち。ルークとベンでは格が違うということがはっきりしたシーンだ。タメにタメたレイアとの邂逅、からの3POへのウィンクもグッとくる。そして最期を迎えた彼の目に沈みゆく太陽が二重に見えたのが悲しく、また何とも温かい気持ちになれる感動的なシークエンスだった。
レイはやや影が薄くなり、カイロの比重が増した。だがこれはEP9へのフリであろう。JJさんヨロシクということだ。ライアンにはその方が書きやすかったのだろう。スノーク?どうでもいいよ、ということなのだし、ファシストで女卑の感覚を捨てられない旧世代にはあのような無様な死が相応しいのだ。
レイが何者でもなかったということは前作のフリを完全に無駄にしたことになるが、それはもう仕方ない。すでに選択されたことだし、そうすることでこのサーガは可能性を増すことになったから。個人的に困惑させられたのは今年続編が公開されたあの作品でも主人公はそうであったということが思い起こされて、何という相似だろうかと。それは偶然というよりも必然で、これまでの映画の流れと現代の有望な作家たちが共有している価値観、その背景にある社会などがそうさせているのではないかと思わせる。
どうでもいいがレイとカイロの交感シーンは『めぐりあい宇宙』のアムロとララァだなあと思いながら観ていたので、いつシャア(ルーク)が「戯言はやめろ」と割り込んでくるかと待っていたら案の定だった笑。
カジノのくだりは武器商人が潤っているという構図を見せるための仕掛けで、なおかつそこに奴隷の子供たちがいることも描いた。現代の構図を誇張して描いているわけだがそこをあまりフォーカスさせないためにあえてダサくやった可能性も感じる。その子供の中から新たな希望が生まれようとしているのも良い。
今作はともすると史上初の「ルーカスを最も排除したSW」ということが出来る。前作でカイロに言わせた“I will finish, what you started.”は製作陣のルーカスに対する宣言だと考えていたが、それがライアンの手によってまず示され、交代劇の末そのセリフを使ったJJ本人がまさに終わらせることになるのは因果である。とはいえ、あのライトセーバーを破壊したライアンとディズニーでもジェダイの聖典(原理)は捨てきれなかったのだが。ズルいといえばそうだけど仕方ないよね。次はJJなのだ。
『フォースの覚醒』ではプリクエルから隔絶(CGI多用の否定)し、今作ではオリジナルからの隔絶(血統主義の否定)、かつ原点回帰(名もなき若者への目配せ)となった。さて次は‥、楽しみは増した。あえて言うなら、JJに出来るとは考えにくいが‥もう少しSFとしての設定を見直してもらいたいところだがやはり無理かな‥
ちなみに女性が主人公のSW、今作の冒頭では女性兵士が自らを犠牲にしてドレッドノートを沈め、女性指揮官が特攻を仕掛けて味方を救う。そして最後に女性整備士は英雄的自死を選んだ男を救う。そこで語られる台詞はとても現代的で素晴らしいものだった。フィンはポカンとするよりなかった(ファーストキスの可能性‥)みたいだが。オトコはみんなア○のSW、悪くない。