「今回の正解は"4D系"でしょう。相対的なIMAXの画質の悪さが残念。」スター・ウォーズ 最後のジェダイ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
今回の正解は"4D系"でしょう。相対的なIMAXの画質の悪さが残念。
世の中では賛否両論が飛び交っているようですが、どうぞご自由に。
どんな期待をしているのかわからないけれど、しょせんSWは"陰陽思想"、"親子対立"、"師弟対決"の構造が延々と続いていく大河ドラマ。ファンの期待が大きければ大きいほど冒険はできず、”古典”化が加速していくだけ。個人的には別に裏切られてもいないし、こんなものである。
むしろディズニー製作になって、性別や人種の多様性に気配りをしすぎる嫌いがある。実写版「美女と野獣」(2017)においても、18世紀のフランスにあんなに黒人がいるわけないし。今回のSWはアジア系のメインキャストが注目されているが、個人的にSWは白人による白人SFで構わない。奇妙な異星人もいっぱい出てくるから、アジア系もラテン系も"宇宙人"みたいなものということで・・・。
さて、多くの人がストーリーばかり注目するが、SWは、”映画技術”における偉大な功績を持つ作品である。CG以前のミニチュア撮影しかり、劇場のディスクリート・サラウンド音響(ドルビーデジタル)や、劇場クオリティの均質化(THX)、さらにはホームシアターの再生基準を提言してきた。今回の「最後のジェダイ」についても、いろいろ思うところがある。
ちなみに現時点で、2D字幕版(14日の前夜祭)、IMAX2D版(15日深夜0時)、そして3D4DX版(15日)の3バージョンを観ている。ドルビーATMOSはこれから・・・。
今回の正解は、おそらく"4D系"である。4DXないしはMX4Dで観ないと、「最後のジェダイ」は真価を得られない。前作「フォースの覚醒」はIMAXカメラを使った効果のあるシーンもあり、IMAX3D上映もあったが、今回のIMAXは2Dである。しかもSWはシネスコなので、上下に画角が足りない。大スクリーンの2D字幕版と大差ないのだ。
しかもIMAX版を観るかぎり、瞬時に、"画質、悪っ"と思ってしまう。ノーランの「ダンケルク」(2017)や、イーストウッドの「ハドソン川の奇跡」(2016)のような抜けるようなIMAX6.5K高画質に馴れた観客の眼には、物足りない。
今作はファースト・オーダーとレジスタンスの宇宙戦の攻防がメインで、いいカメラで壮大な風景を捉えるシーンが少ない。レイとルーク・スカイウォーカーが出逢う惑星オクトーにしたって、「フォースの覚醒」のエンディング映像の美しさから、ワンランク画質が落ちている。印象的だった緑がないし。
多くのCGシーンで、4K未満で制作されているように感じる。ある意味で、episode4(新たなる希望)世代のミニチュア特撮っぽくて、ノスタルジックではあるので、好きだったりもする(笑)。
では、なぜ4D系が正解か。「最後のジェダイ」は3D映画である。しかもデジタル3D作品を「チキン・リトル」(2005)で真っ先に採用したディズニー制作だ。3D映画への思い入れが違う。
オープニングのテロップロール。銀河の星を背景にして、3Dで文字が流れる。そのままレジスタンスの秘密基地がある惑星ディカーの地表に向かって、カメラは急降下していく。上下の奥行き感を意図した3Dカメラワークである。もう序盤から3D上映を前提としたコンテが描かれているわけだ。
その他にも、惑星カントニカのカジノで、入口からいくつものオッズテーブルを、カメラが奥に向かって移動していくシーンは、視差を効果的に狙っている。また、クライマックスシーン。惑星クレイトの反乱軍の基地を奥に構えて、両陣営が対峙する陣形も、3D効果が抜群である。
では、なぜIMAXを3D上映にしなかったのか。それは、あきらかに4DX3DないしはMX4D3Dで観てほしいのである。
4D作品も世界初の「センター・オブ・ジ・アース」(2009)以降、時間と共に、システムの使いこなしが熟れてきた。最近では「猿の惑星:聖戦記」(2017)で、乗馬の鞍の動きを座席シートで実現していたり、そのチューニング進化には目を見張るものがある。
ディズニーでは「ズートピア」(2016)あたりから、制作段階で4D上映を前提とした演出構成が行われ始めている。4Dには様々な特殊効果があるが、とくに水しぶきや雨のシーン、風が吹くシーンは分かりやすい。「最後のジェダイ」も、惑星オクトーのダークサイドの洞窟内で水が使われるなど、4D設計が綿密になされている。
そして、いま公開されている4DX3DとMX4D3Dは、"ライトサイド(光)バージョン"だったということ。"ヒャー"。
すでに「アベンジャーズ」などでキャラクターごとに、"アイアンマン"バージョン、"ハルク"バージョンという前例があるが、ライトサイド側のキャラクターを強調しているという。
片方を観ただけで、ちゃんと認識はできていなかったが、ダークサイド(闇)バージョンが1月5日から世界最速で公開されるという。困ったことに、またしてもSWの上映バージョンは10種類以上(字幕/吹替含め)あるということになる。
追記:12/29~IMAX3Dが決定したので、その意味合いを再確認する必要が出てきた。とはいっても画角はシネスコのまま。IMAX3Dはプロジェクターが2台なのでその明るさの効果は楽しみなものの…。左右のプロジェクションの画ズレのほうが気になることも多い。
(2017/12/15/TOHOシネマズ新宿IMAX2Dシネスコ/ユナイテッドシネマ豊洲4DX/字幕:林完治)