「過去を葬るのでも、新しく始めるのでも、それは監督が自由に決めればい...」スター・ウォーズ 最後のジェダイ シネマユングさんの映画レビュー(感想・評価)
過去を葬るのでも、新しく始めるのでも、それは監督が自由に決めればい...
過去を葬るのでも、新しく始めるのでも、それは監督が自由に決めればいい事だ、と私は思うのですが。
今作で致命的なのは、映画としての出来が悪い、という事です。
ライアン・ジョンソン監督のStoryTellingは、恐ろしく稚拙極まりない。
しかしこの映画を、米国の批評家連は大絶賛。
それが大いなる謎でした。
で、米国の批評家とちょっと議論して、ふと閃いた事があります。
知っての通り、米国の映画村ハリウッドは民主党支持のリベラル左派が圧倒的多数、というか、ほぼ100%がそっち系。
しかし米国の現政権は、ご存知のようにトランプの共和党。
で、トランプ大統領はかなり強硬右派。そして人種差別的な発言もする。
ハリウッド陣営はトランプ氏をリコールしたい。
が、それは不可能。
現在の米国の映画業界村には、まず、そういう背景があります。
そんな状況の中、
この映画は、主人公が女性で、今回はチャイニーズに見える女性(アメリカ国籍)、アフロアメリカンの男性、その他、満遍なく人種をキャストして、
「ヒーローは不在、つまり、誰もがヒーローだ。
ヒーローになるためには、血統も資格も修練も一切不要だ。」
というテーマを、SW世界で強引に推し進めるために、
テーマを完遂する上で邪魔になる過去の”権威”は、ゴミのようにあっさり葬り去られる。
ライトサイドもダークサイドも等しく、"権威"はポイ捨てされる。
ついでに前作から引き継いだ、あらゆる伏線もポイ捨てされる。
ラスト近くに、奴隷の幼児がちょっぴりフォースを使うシーン、これは米国内の民主党系リベラルにとっては、心の中で拍手喝采のシーンでしょう。
つまり、米国内の政治情勢も理解しないと、
SWすら読み解けない、面倒な時代になりました。
これは、いち映画ファンとして、全く歓迎出来ない状況です。
EP7製作の時点では、ハリウッド陣営はトランプ政権の登場をほぼ予期しておらず、ヒラリー押し一筋でした。
トランプ政権誕生後の、ハリウッド発、正伝StarWars。それが今回のEP8なのです。
確かに、映画には時代を写す鏡、という役割もあるのですが。
昨今のハリウッドの製作陣&批評家陣は、映画本来の価値や魅力とは全く関係ない政治的側面でHotになり過ぎて、
肝心な映画のドラマとか整合性とかに無頓着になっている嫌いがあります。
アンチ・トランプ効果です。
米国の政治情勢が、SWにまで影響している。
この不恰好な映画で提示された不条理や謎の正解はぜんぶ、映画の外側にあります。
いま米国内に住んでいる批評家は、その外側をヒシヒシと感じているから、この映画を大絶賛する。
私は、映画はあくまで普遍を目指すべきものだと思うから、
大好きな米国映画が、国内の一部に向けてドメスティックな事をし始めた事に、不快感を感じる。
つまり、そういう構造なのかも知れません。
前作では黒いローブを纏ってたミステリアスな最高指導者スノークのビジュアルが、唐突に金ピカ成金風ビジュアルになっているのは、
あからさまにハリウッドの意志を感じます。
尊厳も地位も与えず、過去も明かさず、早く殺したくて仕方なかったのでしょう。
人間の中にそもそもある、光と闇というアンビバレンスを、もっと丁寧に描けば良かったのに、と思います。
ライアン・ジョンソン監督は、顔に似合わずヒステリックな映画表現がお得意。
ハリウッドでは、そういうヒステリー気質が好まれる、って事なのかな?
ヤダヤダ。笑
貴重な情報をありがとうございました。
当方、スターウォーズに関してはルーカスからディズニーに移行したぐらいのイメージしかなく公開されては映画館に足を運ぶぐらいでありました。
が、あまりの変貌に??。
記載していただいた政治がらみの問題からようやくその理由が理解されました。
思うにディズニーは単にスターウォーズという看板が欲しかっただけであり、ルーカスの産み育てた内容は必要性がなかったのでしょう。
スターウォーズは単なる「金のなる木」の1本で内容はディズニー政治方針に沿った娯楽映画にしてしまうというのが事実ではと。
私自身はスターウォーズはルーカスという天才が生んだアメリカの誇るべき文化であると考えています。それを政治思想と営利目的でぶち壊してしまって何とももったいないことです。ディズニー自体も創設者の志は死んでしまっている営利目的な企業に変貌してしまいこちらも残念なことです。
この映画の痛々しさを宇宙一のクソブスのせいにすることが出来ればまだマシだったのですが,シネマユングさんのレビューを読んでアメリカンリベラルは今どれだけヒステリックになってんだよと恐ろしくなりました.
kunitori1964さん
そうですね、デズニーの理力はかなり強いです。笑
ヨーダの顔をして出現したデズニーが焼き払ったのは、ジェダイの書ではなく、スターウォーズの美意識や世界観が込められた書、だと思います。
これからは、デズニーが勝手にやるよ。それが正しい事なんだよ。という宣言です。
そのアリバイ作りにEP8は利用されました。
とても残念です。
興味深い考察ですね。
かなり腑に落ちます。ほぼ同意です。
映画は時代を反映するものという側面はあります。
1977年に「スター・ウォーズ」が誕生した理由も時代的な背景はあったわけですから。
ベトナム戦争後のアメリカの疲弊と陰鬱な閉塞感。娯楽作品の衰退。
そこで出てきた「スター・ウォーズ」はエポックになりえたわけです。
人種的な配慮、階層社会への配慮などより強くなってきているように感じます。
ディズニーのコンテンツとなった影響は否めません。
ライアン・ジョンソンとキャスリーン・ケネディは多くを語りませんが、ディズニーの思想誘導はかなりあると思います。
ないわけがありません。