「伝統を崩したという事が問題で無く…」スター・ウォーズ 最後のジェダイ キングダムさんの映画レビュー(感想・評価)
伝統を崩したという事が問題で無く…
誤解があるようですが、「最後のジェダイ」の問題は、スターウォーズの伝統を崩したという事では、なく、単純に話が稚拙で、キャラクター描写が弱く、つまらない映画である事です。
スターウォーズの伝統で言えば、そもそもジェダイは、恋愛禁止なので、世襲でジェダイを継承するものでもありません。
その点、本作の主人公が親が誰であるかは、全く問題では、ありません。
(ただ、親を告白するシーンは、唐突に訪れるので、それを山場に期待していた観客は、拍子抜けすると思います)
本作の問題は、前作「フォースの覚醒」で魅力的に描かれていた新しいキャラクターの描写にあると思います。
レイは、ルークと出会い苦悩をしますが、彼女自身の成長とヒロインたらしめる意思決定の描写は、皆無でした。
彼女のジェダイとしての描写の問題は、両親の存在では、なくジェダイとしての、意思を固める決意の描写とジェダイたらしめる修行の描写が不足していた点にあります。
フィンに至っては、前作では、存在感がある主人公の一人でしたが、彼の行動の結果は、ストーリーを左右するものでは、なく、衝動的な行動をするキャラクターという描写にとどまっています。
ポーは、それをさらに悪化させたようなキャラクターで、フィンをさらに衝動的にした行動と、その行動の成果が全く無かったばかりでなく、衝動的な行動の結果、生まれた犠牲を振り返るシーンが無かった為、ヒーローになりえるシーンを奪われました。
元々スターウォーズは、ジョージルーカスが神話学者のジョセフ・キャンベルによる「英雄の旅」をプロットの参考にして、神話的で普遍的なストーリーを開発した作品でした。
Calling(天命)
Commitment(旅の始まり)
Threshold(境界線)
Guardians(メンター)
Demon(悪魔)
Transformation(変容)
Complete the task(課題完了)
Return home(故郷へ帰る)
本作も基本は「英雄の旅」をベースにしている節も見受けられますが、そのストーリーおよび描写が稚拙な為に、それぞれの要素がきちんと表現されていません。
一方で、
ジョン・ウィリアムズの音楽は、変わらず名作で心を動かし、劇中の画の見せ方は、スタイリッシュで心地良い為、ストーリーにこだわらなければ、"雰囲気名作"として、鑑賞出来る要素もあります。
また、評価の高い方のレビューを拝見していると、"新しい"とか"ルーカスの伝統を破って"等、作品を取り巻く斬新さを評価しており、作品を評価をしている人の方が作品の内容自体に言及している事が少ないような気もします。