劇場公開日 2016年9月17日

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「童話の映像化。それ以上でもそれ以下でもない。」BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5童話の映像化。それ以上でもそれ以下でもない。

2016年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

日本語吹き替え版を鑑賞した。スピルバーグが自分で監督をした作品というのは,現在 34 作品で,製作総指揮という立場で関わった 57 作品の方が遥かに数が多い。この作品は昨年公開された「ブリッジ・オブ・スパイ」に続く監督作だというので期待して見に行ったのだが,見事に肩すかしを食らわせられた。

童話作品として原作があるものを映像化したということで,まさにそれ以上でもそれ以下でもない作品であった。巨人の部分はほぼ全てが CG であり,人間は主人公の少女一人だけという状態がかなり続いたのだが,前半は一体何を見続ければいいのか途方に暮れたというのが率直な感想であった。CG は流石に最先端なのだろうが,未だに人間を違和感なく描き出すまでには至っていないということが痛感された。そればかりか,少女が最初に羽織っていたキルト1枚さえ,CG になるといきなり作り物めいて見えてしまうのには落胆させられた。

脚本は,非常に奇異なものであった。夢の国の出来事を解決するのに現実世界の力を借りようというのである。イギリスが舞台なので,まあ笑っていられる話だが,これが日本に舞台を変えたりしたら,きっとサヨクの連中が発狂してしまうに違いない。子供向けならではのおならネタも,絵本で見るなら笑っていられるが,実際にリアルな映像としてみせるのはどうなのよという気がした。そもそも,あのラストシーンはどういう意味なのか,本当に訳の分からないまま放り出されてしまった感が酷かった。大人が真面目に見に行くものではない。トトロでも見るつもりで行かないと私のように肩すかしを食らってしまうだろう。

役者は主人公の少女はなかなか好演していたが,吹き替えがまた本田望結の初挑戦というのに目眩がした。子供が子供を演じてそれらしくて好感が持てたのは,「ファインディング・ドリー」でドリーの幼少期を演じた青山ららくらいのもので,声の演技に幅が乏しく,一本調子なのがどうにも不満である。他の役者の吹き替えをベテランの声優たちがやっているので,却って際立って気の毒であった。

音楽だけは素晴らしく,John Williams がいかにも彼らしい曲を書いていただけでなく,特に英国風にヘンデルを思わせるような宮廷音楽を多数書いていたのが非常に印象的であった。

演出は,良くも悪くもスピルバーグらしさが全開であった。予告にも出ていた巨人が街中で身を隠すシーンは,カメラ目線で見れば完璧に思えるが,数十m後方から見た人がいたらバレバレであり,いかにもその場しのぎの演出が目立った。ディズニーは,これでまたディズニーランドのアトラクションを増やすつもりなのだろうが,何だか,そのためにスピルバーグが下請けに使われているような気がして仕方がなかった。でなければ,いよいよスピルバーグも宮崎駿のようにロリコン化してしまったのだろうか。どっちも勘弁して欲しい。
(映像5+脚本1+役者2+音楽5+演出4)×4= 68 点。

アラカン