「サッカー映画未満」U-31 えるさんの映画レビュー(感想・評価)
サッカー映画未満
この映画をサッカー映画として見ると、チーム同士で試合のシーンさえ無いことにまず落胆するでしょう。
では人間ドラマか? というと、そこも非常に薄っぺらい。
せめてサッカーが得意じゃない役者さんが頑張ってる姿に拍手するぐらいしか、見どころはない映画です。それではお遊戯会と変わりません。
まず、この監督はサッカーの中継を見たことがないのか? と思うぐらい撮影がひどい。
フィールドを走る役者をソフトフォーカスで追いかけるだけで、フィールド全体の状況や他の選手の動きがまったくわからない。
ゆえに彼がどのようなプレイを主体とした選手なのか、まるで伝わってこない。
だから彼のプレイを見て動かされていく周囲の人物が、なぜ動かされたのかが観客にはわからないまま、ただアップで撮られるセリフだけが上滑りをしていく。
サッカー映画でなく、セリフ映画になってしまっています。
セリフの問題は後述します。
次に脚本ですが、時系列がめちゃくちゃです。
アトランタオリンピックで活躍したことになっている主人公が31歳ということは、2000年代前半でないと無理があります。それらの説明は一切ないまま、2016年の東京が映されているのはどういうことでしょうか。
果たして脚本家は原作を読み込んだのでしょうか? なんとなく設定だけを持ってきているように見えます。
原作では主人公がジェフに戻るのは27歳でした。31歳では、選手として条件に要求するものが大きすぎないでしょうか。
さらに言えば、この作品にはいわば視聴者批判ともいうべきセリフがあります。
原作にもある、重要なセリフです。
取り扱いには慎重にならないといけないセリフを、試合もプレイも猛練習もろくに見せないまま聞かされた観客がどう思うか、まるで考えられていません。
これは予算が少ないとか、言い訳でなんとかなる話ではない。
ひたすらソフトフォーカスが続く画面を見せられた後で、観客に唾を吐いているようなものです。
いちおう練習を頑張っただろう役者のために1点は入れましたが、本来だったら0.5点も加点したくはありませんでした。
あまりにも酷い映画です。見ていて悲しくなってきましたが、映画そのものは希望を含めたラストになっているのが皮肉だと感じました。