「.」10 クローバーフィールド・レーン 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。題名とは裏腹に『クローバーフィールド/HAKAISHA('08)』との繋がりは薄く、もはやPOVでもない。冒頭の数分間を除き、殆どは片田舎が舞台なので大規模なディザスター感やその描写もほぼない。心理ミステリーから残り10分程で急遽、怒涛のSFハード・アクションに変貌する。中弛みする事無く最後迄観れたが、終盤とそれ迄の温度差に違和感を憶える人も多いかもしれない。ネタバレは平気な方だが、それにしても日本版の予告篇を含めた広告展開は酷過ぎて言葉も出ない──こんなの見ない方が絶対愉しめる。65/100点。
・エンドクレジットのユニークなタイポグラフィ、意味的にタイトルとマッチしていた。よくよく考えるとM.E.ウィンステッドの“ミシェル”は、J.グッドマンの“ハワード”の元から逃げようが、残ろうが、過酷な運命がその先に待っている(やたらシャワーを強要するのも思惑がありそうで、示唆的)と思わせる絶望的な物語だと云える。
・誰が観ても直ぐに気付ける『クローバーフィールド/HAKAISHA』との共通点は、タイトル名が住所に由来する事だろう。他にも注意深く見ると、序盤給油の為立ち寄るガソリン・スタンド("KELVIN"と云う名称が表示されるが、これは共同製作者のJ.J.エイブラムス[この人の参加で様々なバイラル・マーケティング的な仕掛けが施されている]の母方の祖父ヘンリー・ケルビンに由来し、『SUPER 8/スーパーエイト('11)』にも登場する)の奥の売店のガラスに『クローバーフィールド/HAKAISHA』に登場した"Tagruato"社製のドリンク"SLUSHO!"の電飾掲示板(電照広告)が掲げられている。そしてJ.グッドマン演じる“ハワード”は"Tagruato"社の子会社"Bold Futura"との関係を示す小道具や描写がある。
・出て来るクリーチャーやガジェット等は『ザ・グリード('98)』、『スカイライン-征服-('10)』辺りのそれを想起した。亦、“ミシェル”を演じたM.E.ウィンステッドは、『遊星からの物体X ファーストコンタクト('11)』で演じた“ケイト・ロイド”も本作同様、クライマックスでクリーチャーの口中に爆発物を投げ込んでいる。
・"The Cellar"とのタイトルの脚本の権利をJ.J.エイブラムス率いる製作会社バッド・ロボットが買い上げ、『クローバーフィールド/HAKAISHA('08)』と関連付ける為、大幅に(特に後半のSF的な要素は"The Cellar"には無かった)加筆されたと云う。この脚本を練り直している際の仮タイトルは"Valencia"と呼ばれていたらしい。
・出演者達は、可能な限り本作についての秘密を保持する契約がなされ、撮影時にはタイトルも知らされていなかった。基本的に時系列通りに撮影が行われたが、一部の撮り直しや追加シーンの為、“ハワード”のJ.グッドマンは附け髭を使用している(主なシーンは空調装置不調の為、ダクト越しに再起動を指示する遣り取りの前後、附け髭を装着している)。
・鑑賞日:2016年6月19日(日)