「創造力が繋ぐ世界、創造力で色めく“リアル”」レディ・プレイヤー1 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
創造力が繋ぐ世界、創造力で色めく“リアル”
うわぁ……うっわぁ……すっげえもん観ちゃったよ……
御年70歳の巨匠スピルバーグだが、まだこんな化け物級エンタメを生み出すパワーがあるとは。
満点一歩手前の4.5判定を付けさせていただいたが、それもまだ5月なのでちょっと出し惜しみしての判定。
自分は特撮も'80sエンタメ&ホラーも黒澤明も大好きなので、それだけでも見所だらけで困る上、
SFエンタメとして純粋に楽しい(序盤のカーチェイスは脳ミソ吹っ飛ぶほどのド迫力!)。
なにより心に響くのはこの映画が、登場する数多のコンテンツの奥底にある力を本気で信じている点だ。
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とはいえまずは“キャスト”について書かずにはいられない。
10回観ても数え切れないんじゃないかってくらいに有名キャラが登場するので
口から泡吹きそうになるが、個人的にテンション爆上げとなったのは――
デロリアン! キングコング! ゼメキスキューブ(曲)! 237号室! 三船敏郎! ○○○ジ○!
黒澤明やゴジラの大ファンを公言するスピルバーグ監督だけあって、日本生まれのキャラ登場率は高い。
(場違いにキュートなキティちゃんにもビビった)
熱心なファンの方の中には「キャラの再現度が気に入らねえ!」という意見も当然あるだろうが、
今回登場するキャラはあくまでゲーム内でのアバター(分身)や
アイテムという前提だし、個人的にはそこまで気にしなかったかな。
中盤であの傑作ホラー(超好き)を、あんな高再現度で、あんな使い方をする辺りも最高! 最高だよ!
登場コンテンツについてはとても書き切れないのでここで切り上げるが、いや、心に刺さりまくりでした。
エンタメ映画やTVゲームが好きな方なら必ずテンションの上がる瞬間があるんじゃないかと思う。
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しかし、好きなキャラを詰め込んだだけの作品なら、それは単なるファンフィルムに過ぎない。
この映画で描かれているのはそれ以上のものだ。
現実との境目がつかなくなるVRの危うさや、デジタルコンテンツに娯楽や快楽を求め過ぎて実生活を
破綻させるという今日らしい問題(いわゆるスマホゲーのガチャとかよね)を描写し、フィクションに
依存し過ぎることの危険性を提示しつつも、
本作はフィクションが現実を生きる為の力、人と繋がる為の架け橋となり得ることを描いている。
この映画の影の主人公は、VR世界“オアシス”の開発者ハリデー。
「私の創ったゲームを愛してくれてありがとう」 という彼の台詞に、思わず涙が出た。
自分の創った世界で皆が繋がり、楽しい時間を過ごせ、時には親友や、愛する人にも出逢える。
誰とも繋がれず孤独を感じていたハリデーにとって、こんなに嬉しい事は無かったんじゃないだろうか。
世界を巻き込んだこの一大遺産相続ゲームだったが、本当の目的はもっと個人的なものだったと思う。
自分の創った世界を愛し、理解してくれる人が、生前の自分のように世界の殻に
閉じ籠もって孤独な人生を送ることにならないよう、己の失敗や後悔を伝える。
(フィクションというのは時に、叶わなかった夢の裏返しでもある)
それで自分の大切なものを大切にしてくれる人を救えるし、少しだけ、かつての自分も救える気がする。
ハリデーはそう思っていたのかも。
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「現実は辛く苦しいが、現実は“リアル”だ。言いたいことが分かるかな。」
凄まじい数のサブカルコンテンツを挟み込み、それらのコンテンツを創り出した人々や、それらの作品を
愛してくれた人々への敬意を示しつつ、監督は『創造力は夢を与え、人と人とを繋ぎ、
そして現実をより良い場所に変えるもの』と伝えたかったんじゃなかろうか。
始めに『70歳でこんな映画を作れるとは』と書いたが……
この“超豪華キャスト”の実現に関しても、創造力に関するテーマについても、
数々のエンタメ映画を創り出してきたスピルバーグ監督だからこそ成し得た境地だと思う。
間違いなく今年を代表するエンタメ映画の一本! 見事でした。
<2018.04.21鑑賞>
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マニアックな余談:
クライマックスで、予告でも一瞬映っていた日本生まれのロボットにくわえ、なななんとアイツが!
'02年の日本版よりは'14年ハリウッド版みたいなデザインだったけどアイツが!!
例のテーマも流してくれたし'74年版以来久々に指先から攻撃してくれたので感無量である。
なお、2018年現在において'74年版のアイツを表紙に使うトチ狂った雑誌(←褒めてます)
『映画秘宝』には、'93年度版イラストポスターのデザインとの共通点を示唆する意見も……。
それがマジなら大変なことですよ奥さん!(世の奥さんはこれっぽっちも興味が無い話題)
激アツのレビューですね。
自分もクライマックスのガ○ダ○vsメカ○○○は鼻血ブーレベルでした。両方共大好きな作品なので。
本当は日本でやらなきゃいけないでしょう。いや、日本では無理だからこそ、スピルバーグが夢見させてくれたんだろうと今は思ってます(^^)