劇場公開日 2018年4月20日

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「どうしてこんなにつまらなくなったのか?」レディ・プレイヤー1 曽羅密さんの映画レビュー(感想・評価)

1.0どうしてこんなにつまらなくなったのか?

2018年4月28日
PCから投稿

今回映画を観る前に原作小説を読んでみた。
一言で言えば、失敗した!
原作は本作に比べて100倍面白い。
原作の良さをすべて殺して誰にでもわかりやすい視覚的にベタなエンターテイメント作品に仕上げたというところだろうか?
ちなみに原作小説は日本では『ゲーム・ウォーズ』というおよそ面白くなさそうなベタなタイトルに改悪されている。

原作者のアーネスト・クラインは本作の脚本も担当しているが、インタビューを読む限り監督のスピルバーグの意見が大分ねじ込まれていると想像できる。
『マイノリティ・リポート』にも同じことを感じたが、スピルバーグは原作付きのSF作品を監督するセンスがないし、原作の良さも壊している。

本作に登場する3つの鍵、コインなどはもちろん原作にも登場するが、その獲得方法は相当複雑でクラインのゲーム・映画・アニメ・特撮などのポップカルチャーへの博識度をいやというほど味わわされる。
ところが本作では相当つまらない簡単な方法で獲得できるように変更されてしまっている。
また原作では、ゲームは日米半々、映画はアメリカ寄りだが、アニメ・特撮から引用したキャラクターは完全に日本寄りである。
本作にも登場したガンダムをはじめ、ライディーン、『カウボーイビバップ』の船などメカやロボットには日本由来のものが多く、パーシヴァルが3分間だけウルトラマンに変身してスペシウム光線で活躍までする。
そもそもガンダムに乗るのもエイチである。
原作ではデロリアンも『アキラ』のカネダバイクも登場しない。
また原作にはパーシヴァルが乗り込むロボットも存在しており、東映の特撮TV作品『スパイダーマン』(筆者は当時直接TVで観ていた)に登場したロボットのレオパルドンである。
空母型のマーベラーからレオパルドンへ変形する際の「チェンジ・レオパルドン」のかけ声まで作中で再現する愛情には胸熱である。
クラインはレオパルドンを本作でも使うつもりだったらしいが、知名度が低いという理由で却下されたようだ。
本作に登場するメカゴジラは原作にも登場するが、原作がマニアックなのはミレニアムゴジラに対抗するメカゴジラである「3式機龍」であることをわざわざ明示しているところである。

キャラクターの人物像もだいぶ薄っぺらくなっているように感じる。
ハリデーの盟友のオグデン・モローはもっと重要な役回りなのだが、本作では存在感が薄いし、原作では問題が解決するまでパーシヴァルとアルテミスは会わない。
またダイトウ(大刀)とコンビを組むのは本来はショウトウ(小刀)であり、「ショウ」という名の忍者を気取るチャイナボーイではない。
チャイナ市場を意識しての改変なのだろう。
原作のダイトウは英語を話せず、ショウトウがもっぱら通訳をしているが、英語が流暢に話せるという理由もあって日本育ちのミャンマー人の森崎ウィンが努めている。
森崎はたまたま観たバラエティー番組にゲスト出演していて、そこでは普通に日本語を話していたのに、本作では「おれはガンダムで行く!」という日本語の発音が相当下手な外人発音だったのはなぜなのか?

原作を読んでいると『ウォー・ゲーム』『レディホーク』『レジェンド』の3本の映画がたびたび登場するので調べたところ、Blu-rayで発売されていることがわかり購入したが、3本ともレイトショー1本の値段より安く手に入ることに衝撃を受けた。

クラインの新作『アルマダ』は早くも映画化が決定しており、日本でもハヤカワ文庫から先月翻訳刊行されたばかりである。
またまたゲームを中心にした作品のようである。
ゲームを使って異星艦隊と戦うという内容らしく、それだけ聞くと『エンダーのゲーム』とほぼ同じように思えるが、期待したいところである。

原作改悪度:10

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曽羅密