「期待から遠く“薄味”な人物たち」レディ・プレイヤー1 zoirさんの映画レビュー(感想・評価)
期待から遠く“薄味”な人物たち
公開が待ちきれず、先に原作を読んでしまったのが失敗だった。★7つぐらいの期待で鑑賞に臨んだんだけど…。原作との単純な比較がフェアじゃないのは承知の上であえて言うなら、OASISの描き込みを除くすべてが「希薄」で、がっかりだった。これから観る人は、原作はあと回しを強く強くオススメします。
最初のカッパーキーの入手方法を、もし原作のパーシヴァルが観たらきっとあきれてこう言うだろう。「そんなの何百万人のガンターが何百万回も試したよ!」と。本当はエッグなんて存在しないのかも…ハリデーの悪い冗談だったのかも?というぐらい世界中で調べて調べて調べつくされて、それでも針の穴みたいな解法を見つけ出したから、パーシヴァルはOASISのヒーローになれたはず。なのに、あれでは彼がギークである意味さえない。もちろん、原作者アーネストクラインがインタビューで答えているように、スピルバーグ映画という枠組みの中で、主人公がひたすらジャウストで対戦する地味な絵柄はそぐわなかったろう。でもさすがにもうちょっと何とかならなかったのか。
いくらホラーが苦手だからといって、エイチがあの映画を観てないなんて絶対にありえない(ハイファイブの一員としてという以前にガンターとしてありえない!)し、アルテミスにいたってはハリデーの基礎知識もないかのような台詞がチラホラ。野良ガンターならともかく、ハイファイブはハリデーの発した言葉、好きな映画やドラマに出てくる登場人物の全てのセリフや挙動、好きなビデオゲームの攻略法やバグ、残した得点、数えきれないすべてのハリデー情報がほとんど全部頭に入った「特殊」なオタクだったからこそ、信頼し合い、結束し、巨悪とも渡り合えたはずなのに、肝心な知識の部分があんなにあやふやでは、もう何の人たちかよくわからない。魅力もない。あんな人たちに翻弄されるIOIがただのマヌケに見えて、そのおかげで恐怖もないし敵意もさほど湧かない。
「謎探究へのあくなき情熱とギーク力(ヒマと根性が生んだたまもの)」という最も大事な要素が抜け落ちてしまったために、情熱も努力もあんまり感じないちょっと幸運な主人公たちが、大金を費やしてるくせにやっぱりやる気のないIOIと戦って、なんとなくハッピーにクリアちゃんちゃん、というとっても薄味の映画になってしまっているのだ。
とはいえ!映像化されたOASISはやっぱりすごく魅力的で想像を超える出来だし、他の方が書いているように宝探し的な楽しみ方もある。こんな映画スピルバーグにしか撮れないとも思う。現実のVR(紛らわしい言い方ですが)が、この映画で進歩するかもしれないとも思う。ということで+1点。期待を大きく裏切ったマイナス5点と合わせて、7-5+1=3点。映画から入ったらきっと★4.5だったな…。