「脚本は超繊細で超緻密だが、出来上がりはオムニバス。」ダンケルク Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)
脚本は超繊細で超緻密だが、出来上がりはオムニバス。
2017年公開、英米蘭仏4カ国合作。
配給はワーナーブラザーズ。
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
配役
【陸軍兵トミー】:フィン・ホワイトヘッド
【 〃 ギブソン】: アナイリン・バーナード
【空軍パイロット・コリンズ】:ジャック・ロウデン
【 〃 ファリア】:トム・ハーディ
【謎の英兵】:キリアン・マーフィー
【ドーソン船長】:マーク・ライランス
【ドーソンの息子・ピーター】:トム・グラン=カーニー
アカデミー8部門でノミネートされ、
編集賞、録音賞、音響編集賞を受賞した。
公開時に劇場で見て、最近、改めてオンデマンドで観た。
音の使い方が、そのまま『オッペンハイマー』に応用されていたことに気づく。
タイトルが示すとおり、
史上最大の撤退作戦であるダンケルク戦を舞台にしている。
緊迫感を煽り続ける音、
青味が強い映像、
脚本は超繊細かつ超緻密に練り込まれており、
陸海空、3つの物語を展開していく。
作戦の帰趨や
歴史を描くというよりも、
陸海空それぞれに象徴的な「個」の存在を設定し、
そこにスポットをあてて、ダンケルク撤退戦を描いている。
◆海面に不時着したパイロット
◆座礁した民間の船に缶詰になった陸兵
など、見ていて息苦しくなるシーンが数多く仕込まれている。
ラスト近く、燃料切れに陥ったスピットファイアが、
ダンケルク海岸上空でメッサーシュミットを撃ち落とす。
いや、どうやって??
そして、そのままドイツ軍占領地域に着陸して捕虜になる。
え、なんで??
しかし、そんなことはどうでも良い。
それよりも、緻密に練り上げられた構成が、
散文詩のようにしか見えないことのほうが重い。
「戦闘」はあるが、「戦争」の存在が感じられない。
主要な登場人物は数人なのに、
10以上の作品からなるオムニバスを観たような気になる。
☆は3.0