「戦争の体験談の細かな部分を映画化したかのような」ダンケルク うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争の体験談の細かな部分を映画化したかのような
ノーラン作品には全幅の信頼とまではいかない程度の感想でしたが、「インターステラー」は個人的に好きな作品でした。
前評判の高さや宣伝展開の巧みさもあって、かなり期待していたのですが正直、「よく分からん」というのが素直な感想でした。
DVDで何度も鑑賞したり、解説書や歴史書を紐解いて何が起きているのかをきちんと理解できればまた違うのかもしれませんが、誰の視点でどこに着地点を置いて映画を見るのか、最後まで定まらないまま、映画が終わってしまいました。
歴史上の事実を映画化した、ということらしいのですが、空軍パイロットの視点で見れば、燃料計が壊れてしまい、残りどのくらい飛べるかがわからないので、僚機に残量を知らせてもらっているうちに、僚機が撃墜され、いつエンジンが止まるか知れない不安の中で、それでも30万の兵が海岸に追い詰められたのを守るべく、果敢にドイツ空軍に挑んでいくことは、事実なのでしょうか?
空中戦で損傷したスピットファイヤー戦闘機が、海上に不時着するときには、キャノピーが開かず、あわやパイロットが溺れかけますが、間一髪脱出に成功、民間船に救出されます。これなど、いかにも映画的演出ですが、史実だったのでしょうか?
エンジンが停止した戦闘機で、空中戦を戦い、どうにか敵を撃破したらしい(背景が一切語られないので、想像するしかない)戦闘機を、砂浜に着陸させるときに、ランディングギアが降ろせずに、手動でキコキコやってどうにか着陸したこととか、みょうにリアルな描写ですが、歴史上の事実なのでしょうか?いかにも映画的演出に見えたのですが。
これらのエピソードは演出にしてはずいぶん地味で、事実であればどうやってこんな些末なことが語り継がれたのか。あやふやです。そんな細かいことがたくさん積み重なって、この映画は構成されています。
まるで、戦争の体験談を読み漁って、ダンケルクの生き証人たちの語りを一本の映画にからめとったような構成です。空と、海と、陸から。
どうやら英国人はこの逸話を子供の頃から英雄物語的に聞かされているから、みんな常識のようにここで何が起きたかを知っているということらしいです。
であれば、こんな突き放したような映画でも、何を語りたいかがきちんと理解できるのでしょうか、フランス人やイギリス人たちは。
映像の迫力は文句なしに凄いです。音のリアルさも、飛んでくる砲弾の恐怖も、IMAXに勝る臨場感は得られないでしょう。それでも、映画としては散漫で共感の薄い作品でした。
まぁ、もういっぺんくらい見てみたいとも思いましたが。
2017.9.11