「ノーラン監督が”戦争映画ではない、サスペンス・スリラーである”と強調した106分の緊迫した映像を満喫する」ダンケルク NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
ノーラン監督が”戦争映画ではない、サスペンス・スリラーである”と強調した106分の緊迫した映像を満喫する
確かにこの作品には、残虐なシーンは殆ど描かれない。が、それ以上の緊迫感が全編に漲っている。
冒頭、若き英国兵(ファン・ホワイトヘッド)が姿の見えない独逸兵の銃弾を掻い潜りながら、ダンケルクの浜辺に駆け込むシーンから飛び交う銃弾の音が腹に響く。
ダンケルクの浜辺には救出を待つ多数の疲弊した英国兵たちが佇む。散発的に飛来し、砲撃する独逸機。何故、独逸陸軍が浜辺に進行して来ないのかは明らかにされない。(所謂、今でも謎とされる西武戦線最大のミステリーである。)
が、観ている側にしてみれば、何時独逸軍の総攻撃が始まるのか、ダンケルクの浜辺の多数の英国兵士はどうなるのかと手に汗握る。そして、その気持ちを煽るメトロノームのようなチッチッチ・・・と静かに響くリズム。
この緊迫したシークエンスを、陸(防波堤)・海・空から描くノーランの画。見事である。
所謂、「ダンケルク・スピリット」として、現在でも英国で語り継がれるシーンは感動的であるし、僅か二機のスピット・ファイアで独逸空軍の攻撃を食い止めようとするジャック・ロウデン扮するコリンズとトム・ハーディー扮するファリアの奮闘ぶり。
特にコリンズが撃墜された後、燃料が尽きたスピット・ファイアで敵地に飛翔する(燃料が尽きたので滑空状態なのである)ファリアの笑みさえ浮かべた姿には目頭が熱くなる。
ノーラン監督は”戦争映画ではない”と主張するこの作品は、私にとっては、「プライベート・ライアン」「フューリー」「ハクソーリッジ」といった作品とは大きく異なる手法を使った戦争映画の傑作なのである。
<2017年9月9日 劇場にて鑑賞>
<2019年9月4日 追記>
この作品発表時、ほぼ無名だった、”トム・グリン・カーニー” ”ジャック・ロウデン” ”アナイリン・バーナード” ”バリー・コーガン” 出演作が昨年から目白押しである。実に感慨深い。
コメントありがとうございます。
私は、10年くらい映画レビュアー生活をしていますが、
私のレビューに参ったというコメントを貰うのは初めてです。
他者のレビューに寄り添える柔軟性って、大切だと思います。
私も、皆さんのレビューを極力読んで、皆さんの主張に刺激を受けています。
自分の主張が硬直化しないように心掛けています。
では、また共感作で。
-以上-