劇場公開日 2017年9月9日

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「感情移入ができない」ダンケルク じきょうさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0感情移入ができない

2017年10月10日
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他の方のレビューを見ても、手放しで面白いとか凄いとかはらはらドキドキなどの感情的なコメントより、「あれがコレで、だからこうで、よって素晴らしい」というような説明的コメントを目にすることが多いように思う。

自分自身が、映画に求めているのは、そこでしかできない体験、感情の動きだと思う。であれば、説明的であればあるほどそれは、私が求めているものではないなあと感じる。

例えば、ジェットコースターやお化け屋敷に行って、その面白さをどんなに説明されても、体験には勝らない。

この映画では、一番最初の浜辺に至るまでの脱出シーンは、誰が死ぬかわからない緊張感と敵兵かどこにいるのかわからないスリルが、ゲームのようで構成として素晴らしかった。あのペースで全編やってくれたら、大傑作!と叫ぶのだが・・・。いや、スリルや緊張感がないわけではない。
そう、迫り来る危機は音だけではなく視覚で見せてほしい。肌で感じさせてほしい。数機の飛行機バトルではなく大群で、迫り来る敵軍を戦車や歩兵の実物で、たくさんの民間船を水平線一杯に、沈む船の悲劇を、自分がそこに居るかのように感じさせてほしい。何万人も脱出したというには???そのリアルを映画的なリアリズム(デフォルメともいう)で見せてほしかった。

その後の時間経過を、視点ごとの尺を変えた表現は実験的で戸惑いも多く、何より誰に照準を絞って感情移入したらいいのか分かりづらいのが難。

この映画は、家庭で見るには音響、画角、台詞の少なさ等々でエンターテイメントとして向かないだろう。ディスクになってからの評価が心配だ。

じきょう