劇場公開日 2017年9月9日

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「混じりけのない巧妙さ」ダンケルク むっしゅさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5混じりけのない巧妙さ

2017年9月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

息を飲む緊張感、情報の少なさ、視覚を研ぎ澄ませて映像を探る。中盤までは見ていて徐々にストレスが高まってくる凄い作品だ。
並みの作品なら状況説明を台詞に代えて饒舌に語り、善悪や先の見通しを明確に知らしめてくれるのだが・・・。さすがクリストファ・ノーラン監督。
陸地での流れる時間の物語(桟橋・砂浜)、海上での流れる時間の物語(民間の船)、空中での流れる時間の物語(パイロット)。それぞれの異なる時間が映画という時間軸の中で巧妙に絡み合い進行してゆく。
それを目撃する観客は、銃弾や波しぶき、敵機をかいくぐりながら追体験をさせられる。敵の姿もほとんど見えない、無駄な会話もほとんどない、先の見えない不安の中で登場人物たちとの時間を共有する。
余計な演出がないだけに、かえって戦士たちの怯えや勇気、思いなどが素直に胸に落ちてくる。希有な作風として賞賛したい。実に満足度の高い作品。

むっしゅ