「圧倒的な映像体験」ダンケルク ジョーカーさんの映画レビュー(感想・評価)
圧倒的な映像体験
ノーランの舞台挨拶付きプレミアにて!監督の要望でなんとフィルム上映もしてくれました!ノーラン様様です。
ノーランはCGに頼らない。などの宣伝はよく見かけるが、ほんとにリアリティってそこまで変わるの?と思うかもしれません。本作は、CGでは作り上げることができないかもしれないほど、とにかくリアリティを追求しており、舞台が戦時中であるというより、自分が戦場にいるという感覚なのだ。
新しい映像体験、いや新しい体験ができる。アトラクションのような最高の体験ができるのだ。
本作は、戦争映画ではあるが戦闘がメインではなく、戦場からの脱出劇、救出劇がメインとなっている。そのため悲惨な描写もなく、ノーランらしい、観客に楽しんでもらいたいという想いが表れた作品になっているのではないか。残虐な描写が苦手な人でも安心して鑑賞できる。
戦争という絶望的な状況でも、兵士たちが感じていたのは希望なのだ。その勇気ある一人一人の兵士の姿、市民の姿に希望をもらえるはずだ。
また、ノーラン作品ではキーとなるのが時間である。本作については、その時間が「生死が関わる、有限なもの」として重要な役割を果たす。そしてサントラは全て時計の針の音。その音は錯覚を使って常に上がり続けるような音など、様々な工夫をしたそうだ。そのこだわりぬいた音楽によってもどんどん引き込まれて行く。
何度も、「まるで戦場にいるような感覚」という感想は見るが、まず戦場にいるということがエンタメとして成立しているのだろうか?ただただ怖いものになっていないのも素晴らしい。特に、トムハーディーが演じる安心感のあるパイロットとともに回る空の旅はとにかく美しく、迫力のある、最高の経験だった。
キャスティングについてもノーランはまた新しさを見せてくれた。いつもは豪華キャストでのストーリーであるが、今回は若い人にも身近に感じてもらいたいということで新鋭の俳優を起用したということ。もちろん彼ら以外に、ベテラン俳優も出演しているが、そのバランスが絶妙だった。安心感のあるベテランと、フレッシュな新人。
最後に、この作品にあるストーリーといえば脱出ただ一つ。つまり、“考えるな、感じろ”系だ。だから、みている間はその一瞬一瞬を体感すれば、面白いものになるだろう。