「スピード感溢れるサスペンス仕立てのSFパニック」ジオストーム みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
スピード感溢れるサスペンス仕立てのSFパニック
観終わって素直に面白いと思った。本作は、典型的なSFパニック作品だと予想していたが、SFパニックに、サスペンス、アクション、そして、兄弟愛、親子愛などの人間ドラマの要素を盛り込んだ感動的で面白いエンターテイメント作品である。
本作の舞台は近未来。異常気象対策として開発された気象をコントロールする宇宙ステーションシステムが突然暴走を繰り返し、世界各国で異常気象が発生し死傷者が出る。気象コントロールシステムの開発者である主人公ジェイク(ジェラルド・バトラー)は、弟であるマックス(ジム・スタージェス)に調査を依頼され、単身、宇宙ステーションに乗り込み、地球にいる弟と協力して暴走の本当の原因に迫っていく・・・。
序章にあたる気象をコントロールする宇宙ステーションシステム開発までを、ナレーションだけであっさり片付け、物語はいきなり核心部分からスタートし、スピード感ある歯切れ良いストーリー展開で、寄り道せずにラストまでを一気に駆け抜ける。癖のない回りくどさの全くない単純明快なストーリーなので、理屈抜きで楽しめる。
異常気象シーンは迫力十分であり、昨今の世界中で発生している自然災害を彷彿とさせる臨場感がある。宇宙シーンは、宇宙ステーションなどCG技術を駆使した圧倒的な映像美に魅了される。
本作は、宇宙編と地球編に分かれて物語が同時進行していく。宇宙編は、何の前触れもなく暴走するシステムの不気味さ、制御できない科学技術の恐怖が際立っている。一方、地球編は、陰謀渦巻くサスペンス仕立ての現代劇を観ているようであり、先の読めない息詰まるストーリー展開に緊迫感があり、画面に釘付けになる。
本作は、主人公と弟の兄弟愛と確執、主人公と娘の親子愛、など人間ドラマにもなっている。特に、性格の全く異なる兄弟がそれぞれのやり方で原因に迫っていくプロセスは見応えがある。
ラストは予想外であったが、感動的であり涙が溢れてきた。如何にもアメリカ映画らしい結末だった。本作は、詳細分析すれば、荒唐無稽で突っ込み処は多い。しかし、そんな野暮は言わずに、肩の力を抜いて気楽に楽しむ作品であろう。